半兵衛

操られた目撃者の半兵衛のレビュー・感想・評価

操られた目撃者(1946年製作の映画)
3.7
タイトルだけ聞くとサイコ・サスペンスやジャーロっぽい雰囲気を想像させるが、実際は戦地から帰ってくる恋人を待っている最中偶然殺人の現場を目撃し昏倒した女性が精神病院に入院するが、担当する医師がなんとその殺人犯だったというサスペンスドラマ。一応医師が目撃者の女性を誤魔化すために催眠術で記憶を失くさせようとするが、特に操ったりはしない(しかも催眠術は失敗している)。

何とか医師が殺人犯であることを伝えようとするも悉く彼とその愛人である看護婦に邪魔される主人公の女性、女性を精神異常者に仕立て口封じをしようとする医師のドラマが交互に描かれる様は語り口も上手く見ごたえがありハラハラさせられる。そしてインスリン注射で巧妙に殺害しようとするも自分の医者としての良心との間で葛藤する医者、しかし警察などの捜査が進んでいきやらざるを得なくなっていく後半も結構スリリング。

あと精神病院という舞台を生かした演出が見事で、小綺麗なものの不気味な患者が随所に出てくることでドキッとする。特に中盤、厳重に監視されている問題のある患者が夜中に抜け出し、主人公のもとを訪れ手をかけようとするくだりは患者役の俳優の熱演も相まって結構怖く撮れていてちょっとビビった。

ただ役者が結構地味なので華がなく、どうしても通好みになりがちなところが弱点といえば弱点かも。その中で唯一、医者のところに突然あらわれ不穏な言動を繰り広げる検事が『ザ・プレイヤー』のウーピー・ゴールドバーグのような不気味な存在感を示しサスペンスの雰囲気を盛り上げる。日本だったら仲代達矢や佐藤慶のようなタイプの俳優さんなので不気味な雰囲気が似合う。

それと二組の描写を均等に描いている分、焦点がややぼやけ気味になっているのも否めない。もし目撃者メインにしていたらサイコ・サスペンスとして、医者メインだったら犯罪映画として軸が成立して見やすくなっていたかも。

ラストは予想通りだが、古畑任三郎みたいな終わりかたが結構好み。
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