S端子

すずめの戸締まりのS端子のレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
3.5
新海誠がここまでストレートに震災を描くだなんて思わなかった。最初と最後の「すずめの戸締まり」のタイトルバックが素晴らしく、戸締まりという言葉について深く浸りたくなる。描写がリアルで人によっては本気でキツいと感じる人もいるだろうが、クライマックスのすずめの台詞に救われる人も多いと思う。

それ以外で好きなのが、タマキがすずめに対する不満をぶちまけてしまった後、「そう思ってたことは本当だけど、それだけじゃないよ」と伝えるところ。映画に登場する母親は子供へ無条件の愛を持って接する完璧な存在として描かれることが多いけれど、現実はそんな理想だけではないわけで。理想に押し潰される人も多い中で、あんなことを言ってくれたのは素直に嬉しい。

全体的に非常に王道な作品に仕上がっていて、秒速5センチメートルに感じた自意識に溢れた作家性があまり感じられなかったのが少し残念。と言うか、今の新海誠の作家性を語る上で、秒速はもう切り離して考えるべきなのかもしれない。主人公の内面に深く入り込んで自意識の嫌な所までも描いていた頃とはもう異なるステージに行っていると思った方が間違った見方をせずに済むかもしれない。
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