右も左も

すずめの戸締まりの右も左ものレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
3.0
予告を見ていた時は面白そうに思えなかった。あの、星追う子どもを覚えているからだ。嫌な予感の方は当たったが、多くの方の意見を目にし、耳にし、自分の理解が及ばなかったところも改めて考えることができて、良い経験をした。

過去2作は誰しもに起こりうる自然災害をテーマとし、今作はその集大成になるのではないだろうか。作り手として何らかの影響が及ぼされるあの震災を通して、特に今の若い人たちに感じてほしいメッセージをその時の新海監督の感じたままに作品に落とし込んだ印象。

ご都合主義が映画の特権というのは仕方がないところであるが、ノイズを生じさせることは否めない。ご都合主義のつるべうちは、すずめがいつもああいう所謂”いいひと”と”いい偶然”達に囲まれて、助けられて生きていく中で、本当に成長するのだろうかと疑問を感じる。大きな何かと対峙しながら、自分の中の問題とリンクさせるセカイ系は結局なんだかよくわからないことが理屈を関係なく解決させてしまう理不尽さも勢いで誤魔化されていることにどれだけの人が納得しているんだろう。

私のようなおじさんになってしまうと、キャラの見た目の造形(特に猫的な何か)が感情移入や世界観を受け入れる気持ちを削いでしまう。

新海監督が宮崎駿からは逃れられない世代であるのは間違いないが、あまりにも既視感を覚える表現をしすぎではないだろうか。映画とは今まで見たことがないような表現を体験させてくれる素晴らしいツールであり、そのための大画面とスピーカーだと思っているので、どうしても豪華な二次創作には退屈さを覚えてしまう。ここまで映像表現が進歩しても、結局日常表現をアニメ化させることで、実写よりも美しい実写を見せることだけで留まってしまうことに何だか限界を感じざるを得ない。

過去作よりもこの作品を推す人がいるのはわかる気がするが、私が求めているのは従来の内省的な作品から君の名は。に舵を切り、評価と興行的成功に至った変化にあるので、この三部作で完結として、今度はテーマを大きく変えて、新たなステージを見てみたい気がする。

関係ないかもしれないけれど、初めてテレビでラピュタを見た時のような興奮と感動はアニメでもう味わうことはなんだろうな。