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すずめの戸締まりのo219028tのレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
4.4
これは新海誠の行きて帰りし物語である。日常の世界から非日常の世界へと旅立ち、精神的な成長の末に日常へ帰る物語である。日常を過ごすということは、明日も今日と概ね変わらないと考えることである。そのことを前提にして社会は運営されており、この前提が日常という感覚を知覚し得るものとする。このイメージの中では自身の生活を破壊し尽くすような非日常(災害)と日常が出会うことはない。しかし、この日常と地続きにある非日常(災害)と向き合うことによってのみ、非日常(災害)が奪った日常の尊さ、そこに捨て置かれた土地の持つ美しさ、そこにあった暮らしの豊かさを知ることが可能になる。その意味において、この揺れる大地の上を歩く「足の物語(ロードムービー)」は、新海誠の「恒久的な風景は存在しない」という思想を最も端的に表現している。そこにあった風景をアニメーションとして起こし直すことで生じるセンス・オブ・ワンダーは、受け手に見ず知らずの土地を思い出させる」のである。
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