三好毅志

東京2020オリンピック SIDE:Aの三好毅志のレビュー・感想・評価

東京2020オリンピック SIDE:A(2022年製作の映画)
4.0
失礼ながら、意外にも面白かった。アスリートたちの人間ドラマを、「LAロー」とか「ER」などのアメリカのテレビドラマのように重層的に描き出すことで、全体が現代世界の縮図にもなっている。「オリンピックを批判的に描いているので快く思わない何者かによって公開直前に監督のスキャンダルを暴露されたのではないか」とブログに書いている人がいたが、どこを見ればそう見えるのだろう。たしかに開会宣言に至るまでのシークエンスはえらく冷淡であり、反対派のデモやコロナ病棟の映像が入るのではあるが、アスリートたちが登場した後は一切そのような描写はなくなる。つまり、このオリンピックが多くの国民から歓迎されていなかったことをそのまま簡潔に表現しただけで、むしろオリンピックがなければ見ることがなかったであろう人間ドラマを濃密に描いているのだから五輪批判などではない。そもそもその辺の外野のことは全部SIDE:Bの方に押し込める予定なので、こっちはひたすらアスリートたちを描くのみなのである。しかもけっこう日本びいきであるし、クサくならない程度にカタルシスも用意されている。題材が多くて無駄なカットを入れるほど尺に余裕がないせいか「朝が来る」よりもテンポよく進み、楽に見ることができた。劇場に閑古鳥がブンブン飛び回っている状態なのは何とももったいない話である。
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