Shunsuke1992

TAR/ターのShunsuke1992のレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
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最後まで視聴しないと流れがわからないタイプの作品。

場所、登場人物の関係性などが明示的に描かれてからストーリーが進行するわけではない。誰と誰が連絡しているのか、どこで話をしているのか、顔が出てくる人物の名前は何か、といった情報は後半に出てきた情報を統合しないと判別できない。後半になって状況が少しずつ分かって来ると、覚えている範囲内で前半部分の会話の内容を解釈しながら作品を鑑賞するので脳が疲れる。1周目だとどのくらい面白いのかイマイチ評価できない。おそらく無駄に冗長に感じられた序盤のインタビューや講義のシーンの会話も全体の内容を把握してから再度見るとまた印象が違うんだろう。


直接的に作品の内容に関係しないことも含めていくつか思いつく順に書いていく。ストーリー自体のネタバレはないと思う。







性的マイノリティかつ非白人なので家父長制的なバッハを受け入れないという学生をこっぴどく論破するシーンについて。彼女自身も性的マイノリティ(レズビアン)なんだけど、やっていることは家父長制度的/高圧的/父権主義的(※)といった言葉が似合うんだよね。逆説的だけれども女性の方がそういうところに却って鈍感みたいな例は多い。例えば、アツギの宣伝でタイツを履いた女性が性的だとフェミニストが怒っていた時にその企画を担当したのが女性だった、というような話。(※)のような視点はフェミニストに叩かれることを想定する側の性別=男性に特有のそれなんだろうなとか考えていた。養子に父親と名乗るターはそういう意味で少なくとも"現代"男性的ではないんだよね。

めちゃくちゃになった状態で演奏する場に遅れて登場するシーンはセッションを想起させた。

自殺したクリスタが本当に性的な関係性を迫られていたのかはよくわからなかったが、他のところで働けないように根回しをしたメールを消していたくらいだから疚しいことはあったんだろうな。

オルガを追いかけて見つからなかったシーンの意図が不明だった。オルガは存在しない女性なのかとチラッと思ったが(幻聴が頻回にあったため)、パートナーにも認識されているのでそれだとあまりに意味不明か。そんなサイバーパンク映画かビューティフルマインドみたいな文法で話が進むわけはないか?

とりあえず1週目はあまりよくわからなかったので点数なし。
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