なみと

ケイコ 目を澄ませてのなみとのレビュー・感想・評価

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)
3.5
予告を見て面白そうだなと思っていたのと、評価が高い映画だなと思ったので見ました。

不快な音、心地いい音、特に気にしたことのなかった音。
日々の生活の中に音は常に存在していて、完全な無音の状態なんてきっと、この現代には存在しない。
そんな音が、完全になかったら。
同じ景色でもそれはたぶん、全然違うように映るんだろうなと、当たり前のことを改めて思いました。

原題が「負けないで!」なので、この映画は現代人、特に聴覚障害のある方へのエール、なんでしょうか。
どうしてこのタイトルに変更になったのか、調べてみたら面白いかもしれない。

ボクシングってとてもむつかしいスポーツだと思うのだけれど、どうなんでしょうか。
私にはケンカとスポーツの区別がつかなくて。ルールがあるかないか、なんでしょうか。
どちらにせよどうしても、「とっても痛そう」と思ってしまう。
劇中にも出てきたけれど、どうしてボクシングをするの? どこが好きなの? と聞いてみたくなってしまう。
全身運動だからなのか、リズミカルに動くからなのか、ダイエットの手段として女性の間で定期的に流行っている気もするけれど(フィットボクシングとか)、好きで殴られたい人なんてほとんどいないだろうし。
映画を見て、主軸と外れてるとは思うんですが、好きで人を殴る人は少数派なんだろうかと思いました。いや多数派だったら怖いから少数派だといいな。

この映画は音を大切にしているから、小気味のいいパンチが続けられた時の快感を主として扱っているんですかね、音のない世界の主人公が魅了される「存在しない音」というか、リズムというか。
上手く言語化できないけれど、それってなんかいいなと思うし、怖くても嫌でも、色んな思いやしがらみがあっても、またそこに戻ってしまう気持ちは分からなくもない。

耳が聞こえないけれど読唇術で会話が成り立つ主人公を、何も知らない健常者は「ワガママな女だ」と捉えているようなシーンが多くて、想像力が足りないというか、私もだけれど、やはりなかなか慮ることはむつかしいのだなと思った。
夜の高架下を通るシーンは真っ暗で、音のおかげで私たちは電車だったり自転車だったりの接近に気がつくことができるけれど、耳が聞こえなければ突然現れる光や人に驚くばかりだろう。
主人公は電車も普通に乗り継ぎできていたけど、慣れない場所に何度も一人で行くのは大変なんだろうな。
それこそ私の理解が及ばないくらいに、恐怖などがあふれているんじゃないだろうか。
そんなことをつらつら思いました。
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