たいよーさん

この子は邪悪のたいよーさんのレビュー・感想・評価

この子は邪悪(2022年製作の映画)
3.6
完成披露試写会にて。凄い気持ち悪い…これは褒め言葉。監督が言っていた「家族愛を気持ち悪く」が濃縮還元。散らかってしまった感じはあるものの、ジャンルのボーダーを持たない意欲作でゾクッとしたし、何よりビビる。


南沙良さん、大西流星さん、桜井ユキさん、玉木宏さん、片岡翔監督の登壇もある激レアイベント。そこで聴いた言葉が作品のリードになったのは間違いない。R-15にしてもいいと思うくらい心理的にダメージの来る作品で、ある程度のイメージを抱いてないと痛い目を見るかも。それほど表現し難い醜悪さが宿っている。しかも、それを家族の名の下で片付けるのだから恐ろしい。

そんなストーリーはというと、5年前の事故でそれぞれ傷を負った家族の物語。主人公の花は心に傷を負い、父は足にダメージを、次女の月は顔に火傷を負って仮面を被る。母は意識を取り戻していないが、戻ってくることで再び家族の時間が動き出す。不自然に…。その謎は迷路のようで先行きが読めない。一つひとつが解いていくの衝撃は大きく、作品のカラーも相まって不気味さを加速させていく。Jホラーみたいな要素もあれば、サスペンスの空気もスラッとまとう。エネルギー消費の映画体験になること間違いなし。

その一方、秘密の解き方は少々複雑。意外とあっさりに感じた他、盛り上がりに欠ける場面も少なくなかった。個々の場面で衝撃を与えてくるので、インパクトが大きいだけに勿体ない。しかしながら、TSUTAYAクリエイターズプログラム2017で準グランプリに選ばれただけあり、プロットは厚く複合的。観たあとの疲労感が凄い。笑

主演は邦画好きなら言わずとしれた新進気鋭の注目株、南沙良さん。濃淡はそこまで強くないが、作品が非常に濃いので上手く調和されている。リードと転換にも柔軟に上手く応えていた。共演にはなにわ男子の大西流星さん。「夢中さ、きみに」から気になっていた彼も俳優としてより魅力的に。家族を描くからこそ必要な、俯瞰する外の目を体現。意外な姿にも驚く。そして、桜井ユキさんと玉木宏さん。両者ともに変化が凄い俳優だけあり、作品の歪さを引き立てる。改めて驚かされる。


公開されれば賛否分かれること間違いなし。あなたにこの醜悪な家族愛はどう写るか。賛否渦巻く感想が楽しみだ。
たいよーさん

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