ノラネコの呑んで観るシネマ

凪の島のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

凪の島(2022年製作の映画)
4.3
これもまた夏休みらしい、リリカルな子供たちの物語。
アル中の父と離婚した母と、瀬戸内海にある母の実家に戻ってきた少女・凪が主人公。
祖母は医師で、島でたった一つの診療所に三世代の女たちが暮らす。
映画は新参者である凪の視点で、島の大人たち、子供たちを描いてゆく。
牧歌的な空気が流れ、一見すると皆幸せそうな島暮らし。
しかし一人ひとりはいろんな悩みを持っている。
幼い娘を亡くし、笑えなくなった老人。
入院中の母親に、会わせてもらえない少年。
吃音に悩み、好きな人になかなか告白出来ない若い漁師。
凪は、人々の物語を知ることで、少しずつ成長してゆく。
そして、凪が見つめているのは、彼女自身の未来でもある。
酔って暴れる父を見て、彼女自身もPTSDの様な症状が出ているのだが、一人で酒断ちをして頑張ってる父のことは嫌いになれない。
強気の母も、どこかでまだ父のことを気にしてる。
嫌な人が誰も出てこない平和な話で、全てがうまいこと行き過ぎな気もするが、子供が主人公の夏休み映画はこのくらい緩くていい気がする。
瀬戸内の情景も綺麗だし、気分だけ夏休みのショートトリップ。
気持ちの良い映画だった。