映画狂人

オラシオの映画狂人のレビュー・感想・評価

オラシオ(2019年製作の映画)
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日常の延長線上に存在する狂気、衝動殺人を犯してしまった青年の空虚な心に迫る僅か10分間の短編アニメ。
ビビッドな色使いの可愛らしい絵柄とは裏腹に中身はダーク、短尺でありながら示唆に富む濃密な作品。
虚無感に支配されると人は感情を失う、心が麻痺してしまい全てがどうでもよくなるからだ。
「うるさいから」
という短絡的理由で他者の命を奪った彼は先天的サイコパスではなく後天的環境要因によるソシオパスである事は疑いの余地がない。
彼のように静寂にシンパシーを感じる人間にとって落ち着きのない騒々しい人というのは身近に存在するだけでストレス要因であり、心の平穏を乱す害悪でしかない。
紡いできた糸が「プチっ」と音を立てて切れる瞬間、ヒリヒリとした渇いた衝動が動き出すラストショットは不穏な余韻を残す。
ネバネバと靴底に纏わり付く刑務所の床が何とも象徴的。
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