永池マツコ

小さき麦の花の永池マツコのレビュー・感想・評価

小さき麦の花(2022年製作の映画)
4.2
哀しいお話だった。農業風景の美しさが物語の繊細さを一層際立てていてよかった。
社交性が少し人より足りないというだけで「あの人変よね」と厄介払いされる主人公たちの姿に、少し自分の姿を重ねてみていた。心の優しい、欲のない人がただ慎ましく生きていく、それすら許されない世界なのか…政治力やお金儲けのスキルがないとこんなにも生きづらい世界なんだなこの世はと思うと本当に哀しかった。その反面、二人が慎ましく日常を送るシーンはとても微笑ましく幸せに溢れていた。穴の空いたダンボールがプラネタリウムみたいに部屋を照らすシーン、ツバメの巣が取り壊されることに心を痛めて逃がそうとするシーン、草で編んだロバ、全てが愛おしかった。台詞が少なくても、二人の気持ちが近づいて、絆を強くしていく様子って描けるんですね。

幸せって、なに。

あと資本主義の弊害を垣間見た。こんな風に心を打つ作品は、ハリウッドには作れない
永池マツコ

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