ひよこまめ

PLAN 75のひよこまめのレビュー・感想・評価

PLAN 75(2022年製作の映画)
3.5
なんとなく、息を詰めて観てしまった。

「選べる」というけど実際は「生を選べない人をきれいに死なして始末する」制度。

という制度自体を、批判するのも肯定するのも簡単だけど・・・

ヒロムはホントは何がしたかったのか、とか

ミチはこれからどうするのよ、とか。

映画には、夢も希望も未来もなにも描かれていない、というか、示されていないというか・・・

社会がどうあるべきか、と考えるときの基準となる価値観っていうのかなぁ、監督としてはもうちょっとその辺をはっきり出した方が良かったんじゃないのかな、と思った。
勇気の要ることだろうけども、コールセンターの成宮センセイが一瞬カメラ目線になる程度では、観客に丸投げすぎて、監督としてはちょっと無責任かな?とも感じてしまった。

例えば、還暦過ぎた自分などは、もしこういう制度がホントにあったら、案外受け入れちゃうかも、と思うわけよ。
映画観ていても、不愉快と思うより考えちゃうのね、こういうのもアリかなぁって。
そんな風に、このプランをリアルに感じる年頃の人ほどリアルに「自分はどうするかな」と思うんじゃないかって気がしちゃうのだけど、それでいいのかってことだと思うのよね。
本来なら、まず、拒否感が出るべきなんじゃないのかな?と思う。
だって、生きているうちは死にたくないのが自然なんだから。
その自然が阻害される、高齢だと仕事もできない、家も借りられない社会で、そういう人には「プラン75がありますよ」って、それは社会の諦めだし、解決策としての殺人だよね。

そう考えると、一番ダメな選択をこの世界の政府はしたんだと思うんだけど、それがあんまり強く伝わってこないのが気になった。
ディレクションとしての淡々、多少のホラー味もあって悪くないんだけど、見えてないけど伝わってくる、湧き上がってくる、というものがもっと必要だった気がする。
冒頭に相模原障害者施設殺傷事件を彷彿とさせるシーンがあるから、かろうじて否定的な目線で物語に入っていけるけど、それがなかったらと思うとちょっとヒヤッとしたりする。
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