あーや

PLAN 75のあーやのレビュー・感想・評価

PLAN 75(2022年製作の映画)
1.1
安楽死制度が実現した架空の日本社会における、ある種の思考実験的な様相を呈した作品。

冒頭で"PLAN 75"が超高齢化社会への対策として制定されたことをほのめかす表現がなされており、作品全体を通してとにかく高齢者たちが肩身狭そうに描かれている。

しかし、現実の日本の政治制度ではそのような意図の政策がうたれることは天地がひっくり返ってもあり得ないことである上、不動のマジョリティたる高齢者が肩身の狭い存在になるというのも、マクロには日本の人口構成を考えれば全くおかしな話で、真面目に日本の社会問題に対する皮肉としての意味を持たせようと考えるのなら、せめて最低限のリサーチくらいするべきだっただろうと思う。

誤った前提と現状認識のもとに作られたストーリーは、たとえ架空の物語でも砂上の楼閣でしかない。
"可哀想な高齢者"論を促進させたいがためのプロパガンダにすら見えてしまう。

フィリピン人女性が出てくるパートも何を伝えようとしているのかさっぱり謎で、「海外ではコミュニティとしての助け合いが活発に行われている」ということを伝えたいのであれば在日外国人の高齢者コミュニティを描くべきであり、孤独な日本人高齢者との比較では論理的に整合性のある対比にもなっていない。

邦画にしては役者陣の演技が割と良いという点だけは評価できるけど、とにかく猛烈に独善的なストーリーが大きく価値を毀損している。
あーや

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