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ゼイ・クローン・タイローン/俺たちクローンのRのネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

自宅で。

2023年のアメリカの作品。

監督はユエル・テイラー。

あらすじ

架空の街グレンタウン。麻薬密売人のフォンテーン(ジョン・ボイエガ「ウーマン・キング 無敵の女戦士たち」)はある夜、敵対するギャングのボスに射殺されてしまうが、翌日何事もなかったように日常を過ごしていた。事件を目撃していたポン引きのスリック(ジェイミー・フォックス「スラムドックス」)と風俗嬢のヨーヨー(デヨナ・パリス「マーベルズ」)に昨日死んだことを指摘されたフォンテーンは自身の死の謎を解くうちに街の暗部に迷い込んでいく…。

Netflixにて、配信されてからちょっと気になっててようやく鑑賞。

いや、これはなかなか面白かった!

お話はあらすじの通り、なんといっても主演陣が豪華。主役は「スターウォーズ」新三部作のボイエガだし、脇を固めるのもベテラン、ジェイミー・フォックスに、今やMCUの新たなスターの1人(興行的には大惨敗だが、応援してます!)となったデヨナ・パリスだし、新旧黒人実力派俳優陣揃い踏みと言った感じ。

他にも出てくる人、「前半は」黒人系の俳優さんばっかなんだけど、みんな「いい顔」揃い。特にボイエガ演じるフォンテーンと敵対する地元ギャングのボス、J・アルフォンス・ニコルソン(「ハード・プレイ」)演じるアイザックの超怖い感じから一変する後半の立ち回りなんかめちゃくちゃかっこよかった!!

で、お話的にはタイトルにも出ちゃってるので言っちゃうと「クローン」を題材とした内容となっている。ただ、作りが面白くて、多分現代設定ではあるんだけど画質が一昔前のくぐもった感じで、尚且つ2023年最新の配信作品なのに、昔の映画によくあった画面の端々に出てくる「黒い丸(調べたら「パンチ」「切り替えパンチ」と言うらしい)」が映されていて、多分意図的に往年の古めかしいジャンル映画的な作りで撮られている。

また、全体的にも要所要所でブラック・ミュージックがかかったり、作中の服装や家具なんかもレトロフューチャー、そしてタイトルやエンドロールなどでポップなイエローフォントを使っているなど、特に「ブラックスプロイテーション」的な趣きが強い。

ということでなんとなーく、タランティーノ感覚なミクスチャー的な面白みがあって、観ていて実に心地よい、そしてオシャレ笑。

それでなくとも「インビジブル」や「Xファイル」「時計仕掛けのオレンジ」など海外映画・ドラマネタがセリフの要所要所で(特にサブカル好きなヨーヨーのセリフで)使われており、そこも良かったなぁ(特にデンゼルネタのシーンは笑った)。

お話的にはフォンテーンのクローンが発見されてから、どんどん陰謀論的な街の暗部に切り込んでいくミステリー要素が強くなってくるんだけど、CMで大々的に宣伝されている人気ファーストフード店のフライドチキン、教会で振る舞われるグレープジュース、縮毛矯正ヘアクリームやクラブで流れるエモーショナルなミュージックなど、徐々に、だが確実に街が「洗脳」されて、様子がおかしいことに主人公3人だけが気づいていく過程が実に不気味。

特にチキンを3人が食べて、初めはテレビの笑い声かなぁと思っていたら、フォンテーンとヨーヨーがそれまでの脈絡なく笑い出し、バックの笑い声がテレビではなくチキンを食べた黒人全員がハイになって食べながら笑っていたとスリックが気付くところとかゾッとしてしまった。

で、秘密は地下にある!ってところはお話の雰囲気含めて、ジョーダン・ピールの「アス」的なんだけど、実は街を洗脳していたのは全員「白人」。ということでここも「アス」よろしく「人種差別」的なメッセージがどんどん色濃くなっていくんだけど(クローンを意識下に置くコードワード「オリンピア・ブラック」というフレーズもどうやらそこに関連するワードや歴史に着想を得られたものらしい)、その上で、黒幕の1人がまさかの「あの人」(吹き替えもご丁寧に「あの声優さん」を起用!)が登場してから更に面白くなっていく。

終盤はそれまで口八丁でいい加減キャラで全然役に立っていなかったスリックの作戦によって、こちら側も気持ちよく騙されたり、「町を守るのは俺たちだ!」的な敵対していたアイザックも加勢し、クラシックカーをブンブン引き連れて一気呵成に高みの見物とってた白人連中を黒人たちがボコすくだりは激アツだったし、何よりめっちゃスカッとした!!

街を揺るがす巨大な陰謀を阻止できちゃったのが「負け犬3人組」というのもヒロイズム的だし、事態が収束しても「この陰謀はこの町だけでは終わらない!だから、もう一丁、いっちゃいますぅ?」的な「俺たちの戦いはこれからだ!な終わり方も爽快感がある「THE END」…だと思ったら、唯一触れられていない「タイローン」という人物のまさかの伏線回収に「そういう意味でも一件落着チャンチャンじゃねぇよ😁!」とこちら側に投げかけてくるラストも不穏すぎてたまんねー!!

という感じで面白さはそこそこなんだけど、特にジャンル映画好きには「刺さる」作品でした!!
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