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NOPE/ノープのYKのレビュー・感想・評価

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)
3.5
「絶対に、空を見上げてはいけない・・・」(ダサい)というキャッチコピーとともに不穏なビジュアルが公開されていた本作。ポスターを見ただけではどういう話なのかまったく分からないが、空に現れた超巨大飛行物体が、主人公たちを追いかけまわすという話である。ちょっとB級感ある設定に怪しさを感じていたので、公開後しばらく様子を見てから観に行った。

舞台はロサンゼルス郊外にある牧場。兄OJとその妹エメラルドは、亡き父から引き継いだ馬を愛情込めて育てている。この映画で馬は(サルも)かなり重要な要素だ。映画冒頭にも別の形で登場する。『The Horse in Motion』と呼ばれる世界最初期の映像(写真)で、走る馬をパラパラ漫画のように動かしたもの。イギリスの写真家エドワード・マイブリッジが撮影した有名な写真である。流れた瞬間、「ああ、映画の原点みたいなやつね」という感じで思っていたら、劇中でOJ兄弟が「この写真を撮った人はよく知られているが、馬に乗っている黒人騎手のことは誰も知らない」と語りだす。エメラルドは「この黒人騎手こそが史上初の映画スターだ」と言って、知ったかぶりをしていた観客に痛い一撃を放つ。冒頭から既にジョーダン・ピール節がさく裂しているのだった。

結果的に見れば、B級映画では?という不安は無用だったが、好きかと言われると『GET OUT』同様微妙。一言で言えば「映画の映画」だ。映画の「観る」「観られる」に注目した、サイコスリル社会派コント的なもの。社会派コントなので、笑っていいのかよくわからないシーンも多々あったが、客席のアメリカ人は爆笑していた。
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