かた

NOPE/ノープのかたのネタバレレビュー・内容・結末

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

正直あらすじにはあまり惹かれなかったものの、「ゲットアウト」の監督作品であるということで鑑賞。勝手にヒトコワ系のサスペンスかと思っていたらガチガチのSF映画でした。

初っ端から不穏な雰囲気で始まり、「もうこれ本編始まってる?」とよく分からないままとりあえず暴れ回るお猿を見守る…口の周り血塗れだし人は倒れてるし、とにかく只事ではない。しかもあの垂直に立ってる靴はなんだ???
とか何とか考えてるうちに場面は変わり牧場へ。お父ちゃん、突然死んでもうた…でも本当にただの事故なのか?から始まる物語。

物語の主軸は他人や動物を「搾取」してきた人間と、される側にあったモノたち。私自身も飼っている犬を溺愛している一方、SNS等で服を着せられ、なぜか赤ちゃん言葉で勝手なナレーションを付け足されている動物を目にすると「ハイ、人間のエゴ〜www」とついつい毒づいてしまう。そんな捻くれ者であるため、これまで自分が前々から感じていたにも関わらず言語化できなかった気持ち悪さの正体が判明したことで大変スッキリとした気分になった。

チンパンジーが暴走する事故において、先ほども述べた垂直に立つ靴については様々な考察が見受けられるが、靴は本当にあの通り立っていて、ジュープが「自分はチンパンジーと心が通じ合ったために助かった」と錯覚してしまうきっかけになった「最悪の奇跡」なのでは…というのが個人的な感想である。余談であるがモデルになった実際の事件に関して調べてみたところ、映画の比にならないぐらい惨いものであったので調べた事を後悔した。

人種差別と聞くと何となく「白色人種と黒色人種」を思い浮かべてしまうが、ジュープの存在によってアジア人も差別される側であったのだという事を思い知らされる。
一つの映像におさめられた黒色人種の騎手と馬、人間の娯楽のために飼い慣らされたチンパンジー…「それぞれの個性を受け入れよう✨」「多様性を大事にしよう✨」「差別なんてもってのほか✨」などと謳いながら、今日も私たちは誰かから搾取され、同時に無意識のうちに搾取する側にもいるのである。それに気がつく事ができただけでも、この映画を観た価値はあったかなあ…

でもAKIRAはさすがに笑っちゃった。
かた

かた