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NOPE/ノープのはいのレビュー・感想・評価

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)
4.0
映画をはじめとするエンターテイメントやその商業性が内包する搾取構造を批判的・自虐的にSFホラーの形に落とし込んだ作品だ。

特に「見る」という行為が強調される。「見る」ことは消費活動であり、時として排他的ニュアンスすら内包する。
例えばSNSでよく見る「日本に性的マイノリティ差別は無い。だってマツコやはるな愛が人気じゃないか」という言説はこの観点で問題だらけであり、「お茶の間でよく目にする」ということは決して寛容や共存のポーズではない。履き違えるな。
「外国人をじろじろ見る」という行為はもっと分かり易いかもしれない。
そしてこれらの「見る」行為が加害性を発するシチュエーションは、見る側がマジョリティの場合、或いは社会的立場が上である場合である。
今作において黒人の主人公とその妹が互いに目を合わせながら困難を切り抜ける描写は、その対極に置かれている。

私はホラー映画に興味がない。最近はSFというジャンルすら距離を感じる。けれどこの監督の作品は面白いと感じる理由は、ここらへんのメッセージがきっちり前面に出ていてSFやホラーがそのメッセージを運ぶ為の駆動力でしかない、という前後関係が好きだからだ。
必要のない話をすると、その点でクリストファーノーランはその逆だから苦手だ。彼は愛が描きたくて次元を超えたり宇宙を跨いだりする訳ではない。ただただ次元を超えて宇宙を超える映像を撮りたいだけで彼の映画における愛はお洒落なキャラクターでしかない。
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