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燃えよドラゴンのTPのレビュー・感想・評価

燃えよドラゴン(1973年製作の映画)
5.0
★1980年、1982年、1985年2回に続き5回目の鑑賞★

 香港映画の枠にしかとどまらない「怒りの鉄拳」から、ローマロケの敢行により世界に目を向けた「道」を経て、米国資本で製作費も大幅アップとなった本作と、ブルース・リーは着実に映画界での躍進を遂げてはいるのだが、武術を励行する島であるはずの場所での気のない練習風景、チープ感の漂うセットと女性陣の服装などB級映画感はどうしても漂う。
 しかし同じく田舎映画の主役でしかなかった「怒りの鉄拳」、気ままな田舎者然とした「道」と比較すると、本作のリーは全編を通じて最高にカッコいい!!

 それと「道」と同様に、出演するウィリアムス役ジム・ケリーは国際空手選手権ミドル級王者だし(本作で見せる研ぎ澄まされた肢体と技の切れがそれを証明している)、ローパー役ジョン・サクソンも黒帯有段者と記憶しており、黒幕のハンを演じたシー・キェンも60歳とはいえ少林拳の達人であり、確かな武術力の持ち主であることもアクションシーンを引き締めている。

 純粋に映画としての評価をすると、リーのアクションシーンは冒頭を除くと1時間程度ないのだが、そこまでの主要登場人物のプロローグは小気味よく、しかも香港の猥雑さをよく表現できていて退屈なことはない。
 このあたりを面白く魅せてくれる貢献者がジョン・サクソンと特にジム・ケリーで、表情や行動それに切れの良いアクションが、他のリー主演作に見られる、リー以外の出演者が圧倒的に弱いという弱点を大いに補う。
 主ストーリーは確かにスパイものによくありがちだし、もともとはローパーを主人公とした脚本だったために話の流れがおかしい(ウィリアムス殺しの報復がうやむやなところなど)ところもあるのだが、カットや編集、スタントなどによるごまかしの一切ない、自身の生身の肉体でのリーのアクションはそりゃもう世界の度肝を抜いたことは想像に難しくなく(私ももちろんその一人(後述))、映画として純粋に評価してもなかなか良い出来と思う。

 リーが世界的にはB級映画たった1本で伝説となったことは紛れもない事実であり、その道程に隠されたリーの、試練を乗り越えるための類いまれな努力、本作公開前に死去したという劇的な人生は、どんなに時代が移り変わっても輝きを失うものではない。
 今、リーの映画を観直すと映画としての評価は低くならざるを得ないのだけども、本作は、私の人生への影響度という観点から何と言われようとも、最高点を捧げたい!


ブルース・リーにまつわる想い出話【その3 最終回】

 小学生の時、私は喘息もちで小2の秋に頭に大けがをしたこともあって、同級生に「貧弱」と言われたこともあったくらいのやせっぽちだった。
 しかし、小6の時に「燃えよドラゴン」を観てから一念発起。筋トレと柔軟を開始した。
 また、「ドラゴンへの道」でリーが魅せた異様なまでに美しい広背筋にも憧れて、ほぼ毎日の鍛錬により、懸垂は中学の時にクラス1位となり(決して体の反動を利用したズルではない)、立位体前屈は―15cmのガッチガッチだったのが+15cmの柔軟な体へ。大学時代には首と足にそれぞれ10kgの重りをつけての懸垂をやるまでに。
 私は体質的にどんなに筋トレをしても筋肉が膨れてこないタイプで、同じ量をこなす友人のようにムキムキにならなかったが、広背筋だけは異常だった。

 そして、40年以上に亘り続けてきた運動は習慣化し、今でも毎日20分以上、全く苦を感じることなく運動をしていて、懸垂も13回×3セットできるほど維持している。

 私は本気でブルース・リーになりたかった。そんなことは当然無理だったが、やってきたことは決して無駄ではなく、リーは日々の鍛錬で人間は変われるということを教えてくれた。
 それは決して肉体の面だけではなく、単身アメリカに渡ってアジア人と蔑まれながらも武術で立身した人生、哲学的な思考、陽気でお茶目な面もあったプライベート面など、リーを知れば知るほど(悪い面もあったようだけど)、若き日の私の師匠となり、その事実は人生の土台になって、彼を知らなければ全く別の(多分悪い方向の)人生になっていたものと思う。
TP

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