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MEN 同じ顔の男たちのhasisiのレビュー・感想・評価

MEN 同じ顔の男たち(2022年製作の映画)
3.4
現代のイギリス。
ハーパー・マーロウは既婚者で、夫婦関係に問題を抱えている女性。
心を病んだ原因のとある事件を切っ掛けに、田舎のカントリーハウスを借りて静養することにした。
1人で暮らしているが、仕事や友人との交流はオンラインでつづけている。
都会の喧騒から離れ、森の緑に囲まれて穏やかな時間が過ぎてゆくが。
じょじょに近隣住民の不自然さに気づきはじめる。

監督・脚本は、アレックス・ガーランド。
2022年に公開された田舎ホラー映画です。

【主な登場人物】🥬🧑🏻‍🦲
[ジェームズ]夫。
[ジェフリー]オーナー。
[少年]お面。
[バーテンダー]髭。
[ハーパー]主人公。
[パブの常連客]2人組。
[フリーダ]警察官。
[牧師]啓示的。
[ライリー]友達。

【感想】🌳⛪
米国での配給会社はA24。

ガーランド監督は1970年、イギリス生まれの男性。
デカプリオが主演した『ザ・ビーチ』の原作者。観光とは別世界のバックパッカーを描いた名作です。
2014年の『エクス・マキナ』で監督デビュー。
SFとホラーを専門にしている。
来月にはSFアクション映画『シビル・ウォー』の公開が予定されています。

今回はSF要素が封印され、哲学大好きなサイコロジカルな一面と、田舎のあるあるネタを美しい映像で描き出しています。

🍎〈序盤〉🪟😱
SFを撮る予算が無い。
魅力の部分が消失して、クソインテリの上から目線。周りを見下した歪んだ小父さんだけが残る。
退屈な10分で挫折確定だが、

心の病気に犯された小父さんが出てきて俄然よくなる。
自己中心的な愛情で、被害者意識の加害者。
声がでかい。
性格悪い男が、性格の悪い男について書くって、理想的な参考書。
(それ、もう病気治ってるから)
“変”を自覚してくれるだけで、「一般論」言っている風でドヤるのが恥ずかしくなるから、自分を知るのは大事。

🎻森と美女と音楽。
台詞が少なく、1人か2人の場面が多く、通行人などは出てこない。昨今の映画の常識からは逸脱しているが、
「家族の幸せにために頑張ってきた」と“愛でる快楽”に没頭する自分を、誰かの性にする人たちの中身がメンなのかと思うと怖すぎて、トラウマになりそう。

脚本の面白さが売りだった監督が「わびさびの世界」に行ってしまうから、人生なにが起きるか分からない。

🍎〈中盤〉🥃👮‍♂️
『千と千尋の神隠し』のカオナシのリアルバージョン。
遅れてきた真っ昼間の恐怖映像で、DVまである。
分かりやすすぎないか。
(具合悪いわ~)

[グリーンマン]☘️
イングランド出身のモンスター。
葉っぱの顔で、再生の象徴。
建造物の装飾などに用いられる古来より人気のデザイン。
葉っぱ小父さん。

よく自分にぴったりなモンスターを探してきたな、と思うけど、子供の頃から怖かったとか。何かしら因縁があるのかも。
わたしだったら何だろう。アチャモかな。
(それポケモンな)

🍎〈終盤〉🛋️🙍🏿‍♂️
ゆったりした時間と不気味な音楽。
台詞も消滅して、あらゆる恐怖で追いかけてくる。
ただし、ターゲットが1人しかいないので、怖がらせるだけ。
脈略もなにもない。

🫄🏻予算フル投入。
クライマックスは、愛情あふれる小父さんの願望が具現化されて、話に聞いて想像していたよりも好印象。
中身は小父さんであるヒロインとの調和もとれているので、デザインも美しい。

モチーフにされたもう1匹のモンスターも、監督との相性は抜群。
友人や家族に性格の特徴を指摘された経験か、あるいは、
「こいつ俺じゃん」の自虐的な被害妄想が生み出したものだろうけど、的を射た気持ちよさがある。

夫ジェームズも酷い役割だったので、報われてよかった。
(自分勝手だけど)

【映画を振り返って】🔪🫲
テレビシリーズを製作していた頃は、時間稼ぎのために音楽と自然の風景を流しているのかと思っていたけど、映画でも同じことするなんて、よほどMVが好きなのね。

監督がパートナーと交わした不快な会話を思い出して、そのまま脚本にしてあるのかと想像させる内容。
「きもい」と「つまらん」を何度心で呟いたか分からない。
過去作がどれも好きだから、危うく「お気に入り監督」にする所だったけど、様子見てよかったわ。

不気味さにおいては、わりと『アナイアレイション -全滅領域-』と繋がっている印象は受けた。
表現は進歩しているけど、いままでずっと美女の中に隠れていた小父さんが外に出て来たので、いい方向に進んだとは言いがたい。

[受動攻撃性パーソナリティ障害]🌿
平たく言えば、言い訳。
攻撃の理由を他人の性にして、正当化させる認知的不協和理論の一種。
ストレスから解放されるため、あるいは、不満をぶつけてすっきりする。他人を犠牲にする症状なので「お前のためを思って言っているんだ」と裏腹に、自己中心的。

……1番の特徴は、被害者として訴えてくるので、暴力を振るわない。
・自分で取り組むリスクはとらないが「こうした方がいい」と安全地帯から提案してくる。
・口では親身に聞いている風だが、相手を見下して馬鹿にしているのが態度から漏れる。
のように、口喧嘩のような衝突が苦手な臆病な性格が生み出す間接攻撃だが、劇中だとその辺をすんなり越えてくるので、もやもやする。
(おそらく、事件の直接原因を分かりやすく表現しようと演出している)

🩲独創性。
常識の枠に収まらない。いままで見た事がなかった絵を当然のように出してくるので、その点では貴重な存在。
それでいて、質問すれば、笑いながら元ネタをすんなり教えてくれる気さくさも持ち合わせている。
劇中のモンスターは『進撃の巨人』がモチーフらしい。

「かくれんぼしよう♪」
奥さんに構ってほしい旦那が、小細工抜き。体1つで勝負してくるマゾヒスト映画。
ホラー版裸芸。
サドマゾどちらの視点で見るかによるけど、健気に頑張る旦那と、いやいや付き合ってくれる奥さんの視線が気持ちいい。

ストイックに自分を追い込んでゆく小父さんがどんな芸を生み出すのか? 
珍しいモンスターが登場して頭を柔らかくしてくれるので、ホラー好きを自称する方であれば、もちろん興味ありますよね?
べつにわたしは見なくても問題ないと思うんですけどぉ……肩書き的にどうなんだろう、って皆さんおっしゃってましたよw
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