yadokari

世界が引き裂かれる時/クロンダイクのyadokariのレビュー・感想・評価

4.5
2014年のドネツク地方のウクライナでの親ロシア派とウクライナ独立派の争いを描いた映画は、ドキュメンタリーかと思うほど臨場感溢れるものだった。ニュースの裏側ではこうした争いが日常の中で行われているのだろう。

いきなり家に爆弾が飛んできてというところから始まる。そういう日常だった。何が起こっているのか当事者でなければわからないことがいろいろあるのだが、そのウクライナの村は親ロシア派に支配されているということ。そして妊娠中の妻と夫は怒りをあらわにする。自分の家の壁がふっとばされて家具はめちゃめちゃなのだ。怒りは当然だろう。

そこに親ロシア派の友達がやってきて怒りは押さえろという。車も家もあとでなんとかするからという。夫はひとまず逆らえない雰囲気を感じている。なんせ親ロシア派の軍隊に支配された村なのだ。墜落した飛行機の羽が落ちている。最初それが何かわからなかったが、親ロシア派の飛行機がウクライナゲリラによって攻撃されたので、その報復としてロケットを打ち込んだのだ。それは今のウクライナ情勢で観るニュースそのものだ。ウクライナの民家が親ロシア派によって攻撃される。

妊娠している妻に弟がいるのだが、彼はウクライナ独立派なのである。それで夫との間に諍いが絶えないのだ。夫もロシア軍のために乳牛を殺して提供しろとか無理な要求ばかりなのだが、妻が妊娠中なのである。弟は妻を他所へ逃がすことを考えるが、妻はここにとどまることを決意しているのだ。

なによりも家族内での争いがあり、その中で引き裂かれていくのが女性なのである。この映画の監督が女性監督でこの映画をすべてのウクライナの女性に捧げるという意気込みが伝わってくる。その中で妻は子供を生むのである。

ラストの衝撃はどんな映画もかなわないだろうと思うのはそれが今現在も在り得る日常だからだ。戦争の中の日常はこの映画にある。
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