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月の満ち欠けのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

月の満ち欠け(2022年製作の映画)
4.0
【職人業の砂糖菓子】
観ていて恥ずかしくなるような、芝居がかった演技と甘酸っぱい恋愛劇。一見すると、良くない映画に見えるかもしれない。しかし、『PとJK』、『オオカミ少女と黒王子』などと2010年代にテクニカルな青春キラキラ映画を撮り続けてきた廣木隆一の巧みな業により、エンターテイメント作品の模範として君臨できる風格がある。多くの日本映画では台詞で全てを説明してしまう。

しかし本作では、死を「死」という単語を使わずに終盤まで演出している。電話がかかる、タクシーが妙なところで止まる、花束を置く。これだけで「死」が、それも大事な人の死が表現できることを示している。

中盤までは甘酸っぱい回想劇で進むのだが、やがて不気味な物語へと転がり、大泉洋演じる超現実を信じない男がそれを信じて停滞した時を再び動かそうとする。美しくも停滞を引き起こす過去を乗り越えていく物語として傑作に仕上がっていたのだ。
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