CHEBUNBUNさんの映画レビュー・感想・評価

CHEBUNBUN

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(2025年製作の映画)

2.0

【依存先を失ったときに敵が現れる】
第37回東京国際映画祭にて筒井康隆の同名小説を映画化した『敵』を観た。『仮面/ペルソナ』や『惑星ソラリス』系の内なる他者を扱った作品であり、私の得意ジャンルではあっ
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夜明けまでバス停で(2022年製作の映画)

1.0

【不幸陳列罪一歩手前で】
「不幸陳列罪」映画というジャンルがある。不幸だけを回転ずしのように並べているだけで、不幸を通じた人間の複雑な感情に迫れず、表層的な共感や同情で成り立っている映画のことを示す。
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アディオス・アミーゴ(2024年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

【決着は夢の中で】
第37回東京国際映画祭が開幕した。初日はコンペティション部門に選出された『アディオス・アミーゴ』を観た。監督のことは全く知らず、内容もマカロニ・ウエスタンと聞いてあまり期待していな
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ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ(2023年製作の映画)

1.0

【映画における夢の役割について】
最近、映画にゲームの要素が含まれるのを目撃する。ゲーム関係の映画化は抑えておく必要があると思い、『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』を観た。本作は、ゲームセンタ
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まる(2024年製作の映画)

4.0

【コンセプトが手中になければ悪用される】
動画版▽
https://www.youtube.com/watch?v=It8OoQSXEpU&t=25s

荻上直子監督は、最近作風を変えたらしい。ここ数
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おんどりの鳴く前に(2022年製作の映画)

3.5

【だらしなく着た「服」に忍び寄る悪】
動画版▼
https://m.youtube.com/watch?v=cCi7mYhEGbY

以前、年間ベスト配信で済東鉄腸さんが挙げていたルーマニア映画"Me
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セレブレーション(1998年製作の映画)

1.5

【ドグマ95の原点】
先日、デンマーク映画のトークイベントに出演した。ドグマ95の話をする関係上『セレブレーション』を再観したのだが、やはり何度観ても退屈でつまらない映画だなと思った。厄介なことに、退
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SUPER HAPPY FOREVER(2024年製作の映画)

3.0

【紛い物のスピリチュアルへの嫌悪と運命について】
動画版▼
https://www.youtube.com/watch?v=nNdS21fEgZA

応用情報技術者試験が終わったのでようやく、五十嵐耕
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Eephus(原題)(2024年製作の映画)

5.0

【おじさんたちの夜まで草野球】
カンヌ国際映画祭監督週間で評判となっていた草野球映画『Eephus』を観た。雰囲気がリチャード・リンクレイターっぽいなと思っていたのだが、想像以上に変化球な作品でまさし
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狼チャイルド(2017年製作の映画)

3.5

【ラストショットに爆笑】
第37回東京国際映画祭にマルコ・ドゥトラ新作『死体を埋めろ』が上映される。そこで予習として『狼チャイルド』を観た。邦題がガッツリネタバレしているのだが、それも仕方がないほどに
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アイヌプリ(2024年製作の映画)

3.5

【歴史のためではない、やりたいから「アイヌ式」を守るんだ】
第37回東京国際映画祭Nippon Cinema Nowにて上映される福永壮志新作を試写にて一足早く観させていただいた。福永壮志といえば、海
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The Old Oak(原題)(2023年製作の映画)

4.0

【サードプレイスと対話】
動画版▽
https://www.youtube.com/watch?v=-s4StX-TVrM

第76回カンヌ国際映画祭コンペティションに出品されたケン・ローチ新作。日本
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アンチクライスト(2009年製作の映画)

2.0

【ケアと加害と被害との狭間で】
イベントでラース・フォン・トリアーについて話すので、彼の加害性の部分から批判的に観るようにしている。『アンチクライスト』を再観したのだが、後の作品に影響を与えている一方
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スウェーデン・テレビ放送に見るイスラエル・パレスチナ 1958-1989(2024年製作の映画)

3.7

【アーカイブ素材は必ずしも実際に何が起こったかを語っているわけではなく、どのように語られたかについて多くを語っている】

第37回東京国際映画祭はドキュメンタリー映画が多く出品されている。その中で、興
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二つの季節しかない村(2023年製作の映画)

4.5

このレビューはネタバレを含みます

【その教師、クズ男につき】
動画版▽
https://www.youtube.com/watch?v=qEIAgQzhvaA&t=516s

第76回カンヌ国際映画祭にて女優賞(メルベ・ディズダル)を
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メランコリア(2011年製作の映画)

4.3

【フィクションで世界を滅ぼすことは救いだ】
先日、デンマーク映画研究者とラース・フォン・トリアーの話をした時に、彼女から「私、ラース・フォン・トリアー苦手なんだけれど『ハウス・ジャック・ビルト』は良か
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The Human Surge(英題)(2016年製作の映画)

2.0

【電子の海のような生の世界のような】
2024年の恵比寿映像祭で上映された『The Human Surge3』の1作目がMUBIに来ていたので観た。『The Human Surge3』はぐちゃぐちゃし
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My Brother's Name Is Robert and He Is an Idiot(2018年製作の映画)

2.0

【希望がない、時間がない、俺私に明日はない】
「陽光の中のナチュラルな美しさを評価する人もいるかもしれないけれど、僕には監督のエゴの押しつけとしか感じられない。しかも3時間。これは拷問だ。「作家性」と
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灼熱の体の記憶(2024年製作の映画)

4.0

【わたしの体は燃えている消防車を必要としている】
第37回東京国際映画祭ウィメンズ・エンパワーメント部門にて上映される『灼熱の体の記憶』を観た。本作は元々、祖母の話を聞いてコスタリカ社会における抑圧像
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ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ(2024年製作の映画)

4.5

このレビューはネタバレを含みます

【気狂いピエロ2あるいは「人は表層が9割」】
動画版▽
https://www.youtube.com/watch?v=xZhu_RFOAXI

公開前から、批評家観客共に酷評に晒され大惨事となってい
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リトル・ワンダーズ(2023年製作の映画)

4.3

【手慣れたガン捌きだガキんちょ集団!】
ここ最近、カンヌ国際映画祭監督週間がキレッキレで新鋭監督を発掘してくるのだが、またしても逸材が見つかった。それはウェストン・ラズーリである。ミュージックビデオ界
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Motel Destino(原題)(2024年製作の映画)

2.5

【モーテル、それは性と暴力、溶けた刻が渦巻く場所】
第77回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に選出されたカリン・アイヌー新作『Motel Destino』を観た。

ラテン映画特有の茹だるような暑
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悪は存在せず(2020年製作の映画)

2.0

【死刑問題をギミックに押し込めて良いのか問題】
一時期、配給が決まっていると囁かれていたが全く公開されぬまま数年が経ったモハマド・ラスロフ『悪は存在せず』をようやく観た。ラスロフは『Manuscrip
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イヴォ(2024年製作の映画)

2.5

【訪問看護師の葛藤】
第37回東京国際映画祭ウィメンズ・エンパワーメントにて選出されたドイツ映画『イヴォ』を観た。

本作は訪問介護士の日常を描いた作品である。案件先へ赴き、ケース・バイ・ケースの事象
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マイデゴル(2024年製作の映画)

3.5

【ここから逃げるために私は蹴る、殴る】
第37回東京国際映画祭ウィメンズ・エンパワーメントにて上映されるドキュメンタリー映画『マイデゴル』を観た。”Maydegol”とは「折れた花」を意味する言葉なん
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赤いシュート(1989年製作の映画)

3.5

【ちょっと記憶喪失プールへ迷い込む】
東京国際映画祭のナンニ・モレッティ特集で上映される作品。ナンニ・モレッティ映画ってイマイチよく分からないのだが、本作は『ローマ法王の休日』のルーツともいえる作品で
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リアリティ・プラス/リアリティ+(2014年製作の映画)

2.5

【なりたい自分だけを見てくれ】
第77回カンヌ国際映画祭にて脚本賞を獲った『The Substance』が待ち遠しい。本作のルーツともいえる短編映画『リアリティ+』を入手したので観た。

さえない男が
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Away(2019年製作の映画)

4.0

【巨人の面影】
東京国際映画祭でギンツ・ジルバロディスの新作『Flow』が公開されるということで急遽『Away』を観た。アニメ映画では時折、ほとんど一人で制作した作品が話題となる。本作もそのひとつだ。
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Measures for a Funeral(原題)(2024年製作の映画)

4.0

【ソフィア・ボーダノヴィッツ、継承される音楽について】
数年前から注目しているソフィア・ボーダノヴィッツ監督が対に2時間半近い超大作『Measures for a Funeral』を放った。本作は、『
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Drowning Dry(原題)(2024年製作の映画)

3.0

【何かが起きる直前とその後】
先日行われたロカルノ映画祭で監督賞を受賞した『Drowning Dry』を観た。

本作は姉妹とその夫を牧歌的な休暇で繋ぐ中に潜む厭な質感を捉えた作品である。夫に関して片
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どうすればよかったか?(2024年製作の映画)

4.5

【統合失調症と向き合った数十年間】
動画版▼
https://www.youtube.com/watch?v=E8v8uNt-ScQ&t=36s

山形国際ドキュメンタリー映画祭日本プログラムで統合失
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大学-At Berkeley(2013年製作の映画)

4.5

【中産階級の終焉にアメリカは何を想う?】
動画版▽
https://www.youtube.com/watch?v=X3CmbhPqEP8

今年は『至福のレストラン 三つ星トロワグロ』に引き続き、「
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バロウズの妻(2000年製作の映画)

3.5

【バロウズ、妻射殺前のメキシコ生活について】
ルカ・グァダニーノ監督がウィリアム・バロウズ「おかま(Queer)」を映画化したということで原作を読んでみた。その中で、バロウズのメキシコ生活に興味持った
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がんばっていきまっしょい(1998年製作の映画)

3.3

【アニメの予習で観た】
ちょくちょく、邦画のアニメ化作品が制作されている。2024年は『がんばっていきまっしょい』がアニメ化される。予告編を観る感じ、中々香ばしい匂いがする。丁度、自宅に元ネタのDVD
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Love(英題)(2024年製作の映画)

3.0

【ノルウェー映画が今熱い!】
先日行われた第81回ヴェネツィア国際映画祭にて批評家の評判がやたらと良いノルウェー映画があった。『Love』である。司書であり小説家のダーグ・ヨハン・ハウゲルードが「SE
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ローカル・ヒーロー/夢に生きた男(1983年製作の映画)

3.3

【出張リーマン買収紀】
「死ぬまでに観たい映画1001本」にはビル・フォーサイス枠が存在する。私の持っているバージョンでは『シルビーの帰郷』が掲載されているのだが、他の版では『ローカル・ヒーロー 夢に
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