CHEBUNBUNさんの映画レビュー・感想・評価

CHEBUNBUN

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青春の門(1975年製作の映画)

3.5

【日本風俗史】
五木寛之の大河小説を映画化した本作は、炭坑労働における風俗史を歴史漫画のように語っていく。大正7年(1918年)、米騒動の中、ダイナマイトで軍に立ち向かった男・伊吹重蔵が炭坑の長へとの
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ヒトラー、あるいはドイツ映画(1977年製作の映画)

4.0

【蘇るヒトラー】
ヒトラーを生み出してしまったドイツにおいてどのようにヒトラーを表象するか。ハンス=ユルゲン・ジーバーベルグはオペラを軸に、フッテージ、絵、人形などといった異なるオブジェクトを層のよう
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The Message(英題)(2025年製作の映画)

2.0

【わたし、動物と話せるよ】
第75回ベルリン国際映画祭はどうも不作らしく、これといって傑作に巡り合うことができない。今注目のアルゼンチン映画枠からの出品『The Message』を観たのだが、ヒューマ
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The End(原題)(2024年製作の映画)

2.0

【アクト・オブ・キリングの監督10年ぶりの新作がSFミュージカルだった件】
動画版▽
https://www.youtube.com/watch?v=6Upo6jyxn_0

『アクト・オブ・キリング
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Aurora(原題)(2010年製作の映画)

4.0

【ショットガンを持つとき感情のノイズが整うんだ】
『シエラネバダ』や『荘園の貴族たち』は社会の縮図として家や屋敷が使われていた。一方で『Aurora』は自他の境界線として家の空間が効果的に使われている
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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ(1984年製作の映画)

3.0

【「お前にやられるなら本望だ」の元ネタ】
中学以来の再観で『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』を観た。

マカロニ・ウェスタンの巨匠セルジオ・レオーネが最期に放ったのは意外にもギャング映画で
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馬の嘶き(2011年製作の映画)

3.0

【】
※なぜかブログに書いていなかったのでXでの短評をアップします。

あらくれの乗馬嬢が、堅物馬を乗りこなし、試合を目指す話。マズィ監督とはやはり相性悪いのだが、彼女が文字通り地を這って、血を吹き出
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風と共に去りぬ(1939年製作の映画)

4.5

【その件は明日考えます】
中学以来の再観だったが、めちゃくちゃ面白かった!

アメリカの映画100選系の企画で取り上げられていいることが多く、当然ながら「死ぬまでに観たい映画1001本」に掲載されてい
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赤ひげ(1965年製作の映画)

3.5

【社会人1年目の教科書】
凄惨な環境に配属され、地獄のような光景にげんなりするも、冬の時代を必死に駆け抜けた先に爽快な息吹が流れる。社会人になり、ある程度の辛酸と変化を経験してきた者にとって黒澤明が『
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飢餓海峡(1965年製作の映画)

4.0

【ミステリーの醍醐味を表象するということ】
業火包まれる質屋から2人の男が飛び出してくる。市民は燃え盛る質屋へと眼差しを向ける中、彼らはひたすら遠くへ行こうとする。彼らは強盗、一家三人を惨殺した挙句、
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パルジファル(1981年製作の映画)

4.0

【フィレンツエ派的構図が美しい】
ニュー・ジャーマン・シネマもとい映画史の中で最も偉大でありながら最も顧みられない現代の映画作家として知られているハンス=ユルゲン・ジーバーベルグ。総じて長尺、難解、鑑
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中央地帯(1971年製作の映画)

4.0

【カメラを振り回した男】
実験映画の名匠マイケル・スノウはカメラの動きに着目した作品を手掛けている。代表作の『波長』では、とある部屋の中を45分かけてズームしていき、やがて波の写真へと眼差しが向けられ
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Ari(原題)(2025年製作の映画)

1.0

【「俺の話を聴けい!」と三島由紀夫モードとなり児童が困惑】
第75回ベルリン国際映画祭コンペティション部門に選出されたレオノール・セライユ『Ari』を観た。あらすじを読む限り『若い女』の男女入れ替えバ
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来し方 行く末/耳をかたむけて(2023年製作の映画)

3.3

【他者の人生をなぞると自分の人生が回り始める】
第36回東京国際映画祭でダークホース映画として称賛された『耳をかたむけて』が『来し方 行く末』と詩的なタイトルとなって公開された。本作はクリエイターの苦
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ラ・コシーナ/厨房(2024年製作の映画)

3.5

【色彩を失った人種のサラダボウルに色を与えると団子になる】
ついにメキシコの異才アロンソ・ルイスパラシオス監督作が日本で劇場公開される。アロンソ・ルイスパラシオス監督はベルリン国際映画祭の常連であり、
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動物誌、植物誌、鉱物誌(2024年製作の映画)

3.5

【《鉱物誌》の本質はとは?】
動画版▽
https://www.youtube.com/watch?v=BS8Kp2l7gZE&t=485s

イタリア映画祭2025にて物議を醸した『動物誌、植物誌、
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顔を捨てた男(2023年製作の映画)

4.2

【人は見た目が9割?それとも中身が9割?】
動画版▽
https://www.youtube.com/watch?v=KDS2ZDkZCGw&t=118s

2年ほど前、菊川の映画館Strangerで
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たべっ子どうぶつ THE MOVIE(2025年製作の映画)

3.5

【和製イルミネーション映画】
動画版▽
https://www.youtube.com/watch?v=IJDwg9b8TL0&t=209s

あらゆるものは映画化されるわけで、潜水艦ゲームはもちろん
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ヴェルミリオ(2024年製作の映画)

1.5

【遅効性のメディアとしての書簡】
イタリア映画祭2025にてヴェネツィア国際映画祭審査員大賞を受賞した『ヴェルミリオ』を観てきた。

山間部の村ヴェルミリオに脱走兵がやってきて、教師の娘に手を出すシン
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人民の勇気(1971年製作の映画)

3.5

【ポトシで起きた殺戮について】
K's cinemaにて開催中のウカマウ集団60年の全軌跡にてチェ・ゲバラ映画『人民の勇気』を観た。チェ・ゲバラは晩年、ボリビアで革命を指導していたことは知っていたが今
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Reflection in a Dead Diamond(2025年製作の映画)

3.5

【イメージのバンドデシネ】
ベルリン国際映画祭コンペティションに選出されたエレーヌ・カテト&ブルーノ・フォルザーニ新作。『デス・バレット』の監督だけあって今回も過剰積載な作品であった。

本作はバンド
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It’s Not Me イッツ・ノット・ミー(2024年製作の映画)

3.0

【キメラを持った男】
レオス・カラックスの中編映画『IT’S NOT ME イッツ・ノット・ミー』が公開された。ゴダールオマージュな作品は総じて大惨事になる傾向があり、本作も厭な予感がしていたのだが、
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今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は(2025年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

【日本のダブル・ボヴァリー】
動画レビュー▽
https://www.youtube.com/watch?v=z0W3yHlmLU8

2024年の東京国際映画祭にてコンペティションに選出されたものの
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オステンデ(2011年製作の映画)

4.0

【匿名的他者は霞んだ世界には入れない】
ユーロスペースにて開催中のラウラ・シタレラ特集で『オステンデ』を観た。ヒッチコック『裏窓』みたいな話だと聞いていたが、露骨過ぎて笑うも観点はめちゃくちゃ面白かっ
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ドッグ・レディ(2015年製作の映画)

4.0

【流離う犬の化身】
ユーロスペースにて開催中のラウラ・シタレラ特集で『ドッグ・レディ』を観た。かなり変わった作品ながらも、『オステンデ』と重ねると見えてくるものがある。

本作は全編流離う野良犬と女の
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コンドルの血(1969年製作の映画)

3.0

【本来の意味で使われる《ヤンキー》】
K's cinemaにて開催中のウカマウ集団60年の全軌跡にて『コンドルの血』を観た。

本作はアンデスの村にやってきた胡散臭い医療チームとの軋轢を描いた作品であ
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落盤(1965年製作の映画)

3.0

【鉱山は危ない】
K's cinemaにて開催中のウカマウ集団60年の全軌跡にて『落盤』を観た。本作は、企業が見捨てた危険な鉱山にダイナマイトを仕掛けて採掘する鉱夫たちを描いた短編である。

ボリビア
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マインクラフト/ザ・ムービー(2025年製作の映画)

4.0

【ジャック・ブラック×アメリカ映画論】
動画版▼
https://m.youtube.com/watch?v=bHZLK0h9oIE

2014年にギネスブックにて世界で最も売れたインディーズゲームに
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アブラハム渓谷 完全版(1993年製作の映画)

5.0

【夢をむさぼる地アブラハム渓谷】
有料note「映画と美術#28『アブラハム渓谷』プルーストたる美術作品との対話について」の一部です。全文は下記にて▽
https://note.com/chebunb
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青春 -苦-(2024年製作の映画)

4.0

【帳簿が消えた!】
動画版▽
https://www.youtube.com/watch?v=AMdRfcXxvEo

ワン・ビン縫製工場シリーズ『青春 苦』を観た。シアター・イメージフォーラム最前で
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青春 -帰-(2024年製作の映画)

2.0

【ブレスト段階?】
動画版▽
https://www.youtube.com/watch?v=AMdRfcXxvEo

ワン・ビン縫製工場シリーズ最終章『青春 帰』をシアター・イメージフォーラムで観た
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絶望の日 デジタル・リマスター版(1992年製作の映画)

2.5

【オリヴェイラ映画の多層性】
Bunkamuraル・シネマにて開催中のマノエル・ド・オリヴェイラ特集で『絶望の日』を観た。オリヴェイラの作品を分析する上で重要な作品ではあったが、面白いかと訊かれたら「
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夜顔 デジタル・リマスター版(2006年製作の映画)

4.0

【片思い世界~ねっとりおじVS熱い娼婦の眼差し】
Bunkamuraル・シネマにて開催中のマノエル・ド・オリヴェイラ特集で久しぶりに『夜顔』を観た。元ネタの『昼顔』も観ているはずなのだが、イマイチ覚え
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カップルズ 4Kレストア版(1996年製作の映画)

1.5

【銃による背後の奪い合いは面白いが】
空前絶後のリバイバルブームはついにTOHOシネマズでも発生し、意外なことにエドワード・ヤン『カップルズ』がTOHOシネマズシャン手で上映されていた。エドワード・ヤ
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訪問、あるいは記憶、そして告白 4K 修復版(1982年製作の映画)

3.0

【封印されしオリヴェイラ】
動画版▼
https://m.youtube.com/watch?v=NhWWtoTlIsw&t=668

Bunkamuraル・シネマにて開催中のマノエル・ド・オリヴェイ
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カニバイシュ デジタル・リマスター版(1988年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

【人生は血まみれの冗談】
動画版▼
https://m.youtube.com/watch?v=NhWWtoTlIsw&t=668s

Bunkamuraル・シネマにて開催中のマノエル・ド・オリヴェイ
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