シゲフジ

さかなのこのシゲフジのレビュー・感想・評価

さかなのこ(2022年製作の映画)
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「さかなクン」の半生を元ネタにしたゆるさマックスの人生肯定コメディ。

イノセントな存在のまま大人になっていくさかなクン。その愛おしい無垢を演じられるのは、能年玲奈しかいなかった。すごい演技。

「キャッチャーインザライ」「ムーンパレス」「エヴァンゲリオン」「こちらあみ子」、イノセンスを抱えたまま大人になることは出来ないと思い込み、切り捨てて人は大人になる。夢見る少女じゃいられない、である。

さかなクンはそういった不可能を成し遂げた、「イノセントな大人」だ。それが虚構でも現実でも、見る人を駆り立てる。

同時に、上手く行かなかったさかなクンとしてのギョギョおじさんが、「イノセントな大人」の危うさや難しさを表現していたように思う(そして自分とパラレルな存在を、さかなクン自身が演じるという面白さもあった)

人や環境に恵まれなかったミー坊としてのギョギョおじさん、ただ、さかなクン自身はテレビチャンピオンで有名になった人でもあるから自分の力で自分の場所を切り開いてきた的な側面もあるので、当然にフィクションとしてみるべきなのだろう

一方ではほんわか笑えるコメディとして、他方では天才の孤独を徹底的に描いたヒューマンドラマとして、ミー坊は物語の始まりと終わりで、一人から始まり、そして一人で結末を迎える。
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