Rita

夢のRitaのレビュー・感想・評価

(1990年製作の映画)
4.2
芸術的で絵画を眺めているような幻想的な作品。

黒澤明監督の晩年の作品で、幼い自分から壮年の自分が見た夢を美しく壮大な風景で描く。監督が見た夢をもとに8つの夢をオムニバス形式に撮っている。

日照り雨、桃畑、雪あらし、トンネル、鴉、赤富士、鬼哭、水車のある村。どのエピソードも奇妙でおかしな話なんですがなかでも3つの夢が好きです。

「日照り雨」🌦

屋敷の立派な門の前で、幼い頃の私は、突然の日照り雨に降られる。それを見た母親は、私に「出てくんじゃありませんよ。こんな日にはきっと狐の嫁入りがあるのよ。狐の嫁入りを見ると怖いことになりますよ」と告げる。私が林の中に入っていくと、向こうから狐の花嫁行列がやってくる。日本の妖怪、古典の怪談。とても奇妙なのに美しい。

「鴉」🖼

私は、美術館でゴッホの絵を見ているうちにいつの間にか絵の中に入り込んでしまう。絵の中の世界を歩いているとちょうど絵を描いているゴッホに出会った。「私には時間がない」と言い残し、去っていく彼のあとを私は追いかけていく。

ゴッホの色んな作品を歩き彷徨う私。ゴッホの後ろ姿にたくさんの鴉が飛び交う様子を見て夢の中で目が覚めた感じの感覚というか、「カラスのいる麦畑」の映し方が良かった。私が最初に通った「アルルの跳ね橋」でゴッホの居場所を尋ねるとフランス語での受け応えだったのが、ゴッホはなぜ英語で話しているのかと賛否両論ある話ですが結局は"夢"なので深く考えても意味はないですね。ずっと続きを見ていたくなる話でした。

ゴッホ役で出演したマーティン・スコセッシ監督。この作品出演前には「グッドフェローズ」を撮影中で、この機会を逃すわけにはいかないと、自分の作品を早く仕上げ飛行機に飛び乗って来たらしい。スコセッシ監督は「黒澤は私や他の多くの映画製作者の師だ」と語っている。

「水車のある村」🌼

いくつもの水車小屋と、澄んだ川の流れる村。私はひとりの老人に出会う。すると、遠くから賑やかな音楽が聞こえてくる。「今日はお祭りがあるんですか?」と私が尋ねると、「いや、あれは葬式だよ。」と老人は答えた。「あんた変な顔するが本来葬式はめでたいもんだよ。よく生きてよく働いて『ご苦労さん』と言われて死ぬのはめでたい。」

水車から流れる川の音。道端に咲く鮮やかな花。鳥のさえずり。水車村の人たちの人間の死に対しての考え方が好き。死ぬことは悪いことと考えるのはある意味間違っているのかもしれない。

ヤッセヤッセヤッセヨイヤサ

私は眠りが浅く毎日夢を見るので夢というのは身近な存在だと感じています。時には一日に3回それぞれ違う内容の夢を見るのですが、こんな一つ一つ関係のない話の構成がリアルだった。黒澤明監督の夢の中は美しいところなんだなと感じた。夢って面白いですよね。友達や親に夢の内容を聞いてみても、私が見たことのない世界があってさらに興味が湧きます。🗻
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