SHOHEI

夢のSHOHEIのレビュー・感想・評価

(1990年製作の映画)
3.5
こんな夢を見た。日照り雨の昼下がり、林の中で見かけた狐の嫁入り。切り取られてしまった桃の木霊の舞。遭難しかけた雪山で見た雪女。戦死した部下たちの亡霊。ゴッホの絵画の世界を渡り歩く私。原発事故で放射能に汚染された日本。変わり果てた世界で鬼になり変わった人間たち。静かな川が流れる水車のある村。8つのエピソードで綴られるオムニバス。

「こんな夢を見た」の書き出しから始まる、黒澤の見た夢を映像化した短編オムニバス。前作『乱』が興行的に失敗したため、資金面でスピルバーグに協力を要請。また出演陣にゴッホ役でマーティン・スコセッシ、映像演出にILMが参加した日米合作。物語は幼少のころの私(黒澤)が狐の嫁入りに出会う「日照り雨」に始まり、人間の一生の終わりを描いた「水舎のある村」の物語で幕を閉じる。ほとんどの短編がテクノロジーを信仰し自然を蔑ろにする人間への警鐘を説いたメッセージが色濃い。色濃すぎるあまり、いずれも老いた黒澤の一方的な説教のように感じてしまうのが難。しかしどれも映像美にこだわった幻想的な体験ができる作品。特に原発事故を描いた地獄絵図のような色彩の「赤冨士」はインパクトがものすごく、痛ましい。
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