そら

ロストケアのそらのレビュー・感想・評価

ロストケア(2023年製作の映画)
3.9
殺人か、救いか。

こんなの観たら、
『PLAN75』みたいな措置も、
やむを得ないんじゃないかと思えてくる。


介護する側も、される側も、
徐々に失っていく"人間らしさ"。


冒頭で綾戸智恵さんが言う。

"刑務所のほうが
よっぽど人間らしい暮らしができる"と。


中盤で柄本明さんが言う。

"人間らしく死にたい"と。


自分が、家族が、
人間らしさを失っていく不安と恐怖は
私にはまだ想像もつかない。

作中の言葉を用いて言えば、
私はまだ"安全地帯"の人間だから。

日々当たり前のように、
人間らしく生きているから。

でも、
"穴"に堕ちる日は突然やって来る。

その穴に堕ちたらもう二度と
這い上がれない。



自分の親がこうなったら。

そう思うだけでもう観ていられない。
涙が溢れて仕方ない。

"絆は呪縛"かあ。
キツイこと言うなあ…。



『人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい』

斯波が救いを求めたであろう
聖書の言葉。

斯波にとってはこれさえも、
"穴"となってしまったのか。


斯波と大友、
ふたりの言う"正義"が、
ゆらゆら揺れながら時折り重なる。
そら

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