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ロストケアのpeanutbuttermfのレビュー・感想・評価

ロストケア(2023年製作の映画)
3.7
父を孤独死で亡くしている自分にとっては、冒頭からものすごいパンチを食らった。呼吸が少し苦しくなり、あ、これ最後まで観れるかな、ヤバいなと思いながら、なんとか最後まで鑑賞した。斯波の行動は正直、理解は出来ないけど共感はできる。中にはもちろん命を終わらせたくなかった人もいるはず。それでも、殺人と一括りにするのは難しくて、でも斯波の訴えているようにあの行為が救いなのかと言ったらそうでもなくて、そんなことを頭の中でグルグル考えていたら、あっという間の2時間だった。介護の長く辛い苦しみから解放された遺族もいれば、人殺し!と嘆く遺族もいる。個人的には坂井真紀演じる母親を介護していた女性が、介護を終えて表情がみるみる明るくなっていく対比が非常に辛く、でも現実はこうなのかもしれないと思ってしまった。
自分はどちらかと言うと完全に検事の大友の安全地帯にいる側だった。経済的理由で介護施設にお願いできない人はたくさんいる。そんな人にしか介護の苦しみはわからないと思う。斯波との対峙で自分の中にある強い正義が揺らいでしまう様は、見応えがあった。最後の終わり方も好き。

年金、生活保護、色々な問題をてんこ盛りにしていて、頭が本当に疲れた。
元気な時じゃないと観れない作品。

そして柄本明と松ケンの全てのシーンで、涙が。ハンカチ必須ですよ。