エビフライ

ブエノスアイレス 4Kレストア版のエビフライのレビュー・感想・評価

4.0
腐れ縁の恋人への執着を手放すまでの物語、もしくはファムファタールにとらわれた男の苦悩と底なし沼からの脱出、とでも言うとロマンチックに聞こえるだろうか。

元々知ってはいたけれど今回初めて鑑賞。事前情報だと男性同士の恋愛がクローズアップされ、評価の高い本作品だが、いわゆるBL、クィアと言う括りに単純に分けてしまうのはもったいないかな。普通に男女の恋愛ものとして成り立つと思う。欧米のクラシックな映画で素朴な青年と奔放な美女の恋、とかでありそう。

ストーリーそのものよりも心の機微とか、映像の美しさが魅力。昔のヨーロッパの映画のようなムードがある。アルゼンチン、香港、台北の街並みもあり記録映画的な側面もあるのかな。

ファイはウィン(というか、ウィンに執着してしまう自分の心)に振り回されてずっと悶々、鬱々としている印象。恋する惑星のトニーの役柄と少し重なって見えた。あちらもCAの彼女に振られて未練たらたら、フェイに好意を向けられるも何か悶々としている。そして相手によく尽くす。
ファイも毛布にくるまりながらご飯を作ったり、信じられないくらいよく尽くしている。

ウィンは奔放でファイと別れてもすぐ新しい恋人?パパ?ができてしまうくらいの魅力がある。魔性、小悪魔、ファムファタールという言葉がよく合う。レスリーは西洋的な香りがする(と私は思う)ので、こういう役がよく合う。なんとなく、往年のヨーロッパの女優がこういう役柄やってそうなイメージ。

この2人を中心に話は進むのだけれども、この映画の唯一の?良心がファイの同僚のチャンという純真な青年。ファイの人生にふわっと一時的に表れ、何か特別なことが起こるわけではないのだけれど、ファイは彼とのやりとりで癒されていく。こういう出会いってあるよなあと思った。

ラストは希望のある終わり方です。
エビフライ

エビフライ