後に大ヒットしたシリーズである映画「ソウ」のようなシチュエーションスリラーの先駆けのような作品。
無差別に選ばれた男女6人が、目を覚ますと密室に閉じ込めらており、その中で出口を求めて奔走する。という至って単純なストーリーながら、次第に追い詰められ疲弊していくにつれ現れる、人間の本質的な恐怖を見事に描き出している作品ながら、約90分という短さに収まっているのは凄いなと思いました。
本作は犯人の目的や意図が見えてこず、全体像が掴めない不気味さと恐怖があり、それが人間の見えない物に対する恐怖心を増長させるように上手く作用しており、見ている側も当事者たちと同じ目線で見ることができ、何故こうなったのか？出口はあるのか？などを一緒に探っていく面白さがあるなと思いました。
個人的な感想になりますが、我々視聴者は、彼らがどう行動し変化していくかを見ている観察者でもあり、その変化を、娯楽として楽しんでいる視聴者自身の倫理観も、試されている作品だと私は思いました。目に見えた犯人や悪意が出てこないことからも、私たち視聴者は、「こういうのが見たい❗️」や、「こういうのを作って。」と、監督であり製作者たちに依頼（希望）する側でもあり、その作られたものにお金を払って道楽として楽しむという、人間の歪んだ部分が上手く表面化されている作品だと思いました。そここそがシチュエーション映画の醍醐味があり、その面白さを本作はしっかりと理解できているので、この短さながらも濃密な作品に仕上がっているのかなと個人的に思いました。
最後に、私がなぜ久しぶりに本作を見ようと思ったかと言いますと、本作がリメイクされるという情報が出たからであり、しかもそのリメイクする国がなんと日本であるという驚きの情報を目撃したので、突発的に原作である本作を見ようと思ったのが理由です。
少し余談になりますが、情報が出てなかったら見なかったかと言われると、少しコメントに困りますが、元々レビューを書くためにもう一度見ようと思っていた作品だったので、ちょうど良かったかなと思いますw
まぁそんな理由もあって、久しぶりに見たのですが、見れば見るほどに日本でのリメイクに不安感しか湧いてきませんでした。
まずどこに思ったかと言うと、社会的弱者に対する扱いです。本作では、いわゆる「障害者の方が実は…」という部分があるのですが、その人物に対しての登場人物達の対応の仕方が、まるで厄介者ののような扱いの仕方であり、日本においてこれは、映画というフィクションの世界においても、かなりタブーな部分だと思います。なので絶対設定を変えてくると思うのですが、変更されたとしても、変わり者の数学の天才という肩書きに変わるだけであり、そこに面白さは生まれてくるのかなという疑問があります。「そんな事を言う君は差別主義者だ！」という声が聞こえてきそうですが、そもそも人間は、意外性という部分に面白さを感じる生き物だと思うので、ただの天才が箱の秘密に気づき謎を解いていっても、「でしょうね」という感想にしかならないと思います。なので意外性をどういう形で出すのかが気になる所です。
第二に、役者陣です。日本リメイクのキャスト陣は既に発表されているので省きますが、それはもう豪華な面々であり、一人一人が主役をはれる人物ばかりです。他のジャンルならそれでもいいとは思うのですが、ことシチュエーションスリラーというジャンルの作品では、それがマイナスに働いてしまいます。
原作である本作の出演陣は、当時の時点での無名の役者が起用されています。それによって、誰が生き残るのか分からない緊張感が生まれ、視聴者も出演陣と同じ目線で楽しむことできます。ですが日本版ではその豪華な顔ぶれから、大体の生存者が予想できてしまい、同列だからこその緊張感が無くなってしまいっています。そういった生き残り予想のし易さという、シチュエーション作品においての面白さを、最初から削いでしまっているのはかなりの痛手あり、見てもらうだけの配役選びが既に裏目に出ています。
まあ日本人のほとんどが、映画を見るという文化に疎いので、そうでもしないと見てもらえない、という理由もあるのでしょうが、最初から失敗感が否めないのが理由の一つです。それならなば、私はまだ見ていませんが、自主映画だけど特殊な撮影技法や、テンポの良さで爆発的な人気を博した「カメラを止めるな！」のように、低予算を売りにするが、原作は実績のある作品という作りにしたほうが、作品自体の評価も安定していますし、原作の最注目にも繋がると思うので、そっちの方が良かったのではと思いました。
まあ実際のところ日本版がどうなるか分からないですし、原作の監督であるヴィンチェンゾ・ナタリ監督自身がこのリメイクに関わるらしいので、そこまで外すことはないのかなと、期待しています。
かなり長くなりましたが、シチュエーションスリラーというジャンルの中で、本作は無きにしては語ることのできない程の作品なので、見ていない人は一度見てほしい作品でした。
🙇🏻♂️読んでいただきありがとうございました🙇🏻♂️
