てつやくん

CLOSE/クロースのてつやくんのレビュー・感想・評価

CLOSE/クロース(2022年製作の映画)
4.0
風景の映像が美しい。
主人公の表情にフォーカスし多くを語らせずに心情を表現しているのが秀逸だった。
通学のシーン。並走しながら楽しく会話する2人。二つに分かれる道。どちらかが語りかけるのにどちらかは振り向かない。どちらかが速度をあげ先を急ぐ。。
冒頭から繰り返される、農家の仕事、労働のシーン。美しい花畑。
眠れないレミ。レオが語るトランポリンのイメージ。しゅーーーーー。
オーボエのソロを擁するオーケストラと、オーボエの無い穴が空いてしまったオケ。
当事者である近親者のこころの傷。
余計な説明やセリフを排して考えさせてくれるしんみりとした切ない映画でした。
ちょっと湿っぽいなぁ ぐすん😢

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以下ネタバレ雑感。



・オーボエの演奏がリアルだった。
・音自体は吹き替えだろうかと思うが、ずいぶん練習したんだろうと思う。オーケストラバックに演奏するシーンも良かった。

・オーボエを吹くレミに見惚れるレオのみにカメラはフォーカスする。その目。ラストのシーンとの対比が素晴らしい。

・レミに、その音楽、オーボエの才能に惚れ、ずっと支えると誓うレオ。その気持ちに、幸せな未来幻影への憧れに嘘はない。純粋であるがゆえ。

・夢を語るレオに対し、レミは
ーまずはちゃんと完璧に演奏しなきゃいけないんだ、そこからだ。

・家族が営む農家の忙しい風景。成長を妨げるものを刈り取り、収穫し、また苗を植える。毎年繰り返されたであろう風景。労働。
・ってこれなんの作物なんだろう。

・レミは夜眠れない。
安心させ、寝かしつけるレオ。トランポリンのイメージ。母性的なものが彼の中に見える。純粋な愛情。限りない距離の近さ。一心同体感。

・レミの両親からも、家族のように受け入れられている。実の家族からは、たまには家で寝ろよと言われている。

・オーケストラとの協演。
フランスのクラシック音楽か?とも思ったが、これはオリジナル。ヴァランタン・アジャディValentin Hadjadj。
・素晴らしい演奏。そこは描かれないが、レオは演奏後に喝采を送ったに違いない。
その曲調に、彼の深いところでの悩みが垣間見えるかな。。レオに伝わったかはわからない。


・進級の初日。
・何度も繰り返される、2人で並走しながらの自転車での通学。とても楽しそう。自転車でなければ、きっと手を繋いで歩くのだろう。
・同じクラスになり嬉しそう。席も隣になり、お互いの顔を見合わせる。
・一方で、集団の中に入った時の、その、違和感。
・案の定、いじめ、とまではいかない、冷やかしから始まる。ませた女子達。
・つきあってるの?英語で言うと、Are you together?
・否定するレオ。俺たちは親友だ。
いや、親友以上に見えるよ。付き合ったら教えてね。
・2人の親密さを受け入れているように見せかけつつの、女子達の冷笑。
・ここでも、レミの気持ちは描かれないが、togetherか?と言われれば、きっと肯定するに違いないと、後で振り返ればそう感じる。親友以上か?と言われれば、それも、イエス。

・男子はもうちょっと幼稚でストレート。
オトコオンナの声がかかる。あるあるだ。
・いじめ、と言うほどではない。
・でも、近すぎるその距離closeに割って入るには十分だ。

・一方で、サッカー選手が常にメインの話題となるボーイズトーク。やれ、ロナウドだ、ベンゼマだ、ムバッペだ。

・ここに加わらなければ、この社会では生きていけないことを示している。ある種の踏み絵。
・当たり前の男子にとっては何の疑問もない。
・レオはレミに言う。お前も会話に参加しろよ。そこにレミは近寄れない。興味のない話になど加われないからだ。

・帰って母親に同じクラスになったことを報告。良かったね!の言葉に対し、レオは曇った表情。

・サッカーをするレオ。綺麗だった顔立ちに、男らしさが加わっていく。
・ホッケーにも興味が湧く。新しい友達。
彼はスケート歴は長い。
ーやるのか?
どうかな?
ーどっちだよ。気持ちを言えよ。
やってみたい。
ーいい答えだ。
新しい友情の芽生え。
新しいグループの一員になる。

学校芝生で寝っ転がる時には、レオを枕に、レミがくっついて来る。嫌がるレオ。それでもくっついて来るが、離れる。何故?とレミ。

拒絶感に焦りを感じるレミ。
ホッケーの練習を観に来る。
なぜ見てるんだ、と冷たいレオ。
ー僕もやろうかな
に、答えないレオ。
伝わらないお互いの気持ち。

今まで自然に思っていた、一緒に寝て寝かしつける、に違和感を感じ始めたレオは、レミのベッドの横に用意されている布団に移動して寝る。
朝目が覚めると、横にレミが。
喧嘩になる。じゃれあいから、本気の喧嘩になってしまう。決定的な決裂が起きる。
通学のシーンにそれが描かれる。

・・・・


余計な説明、セリフがないのが本当に良かった。