ヒラツカ

ゴールデンカムイのヒラツカのレビュー・感想・評価

ゴールデンカムイ(2024年製作の映画)
2.9
最新の『ミッション・インポッシブル』で「なんだよ二部作かよ」と怒ってる人がいて、「そんなに目くじらたてなくてもいいじゃんか」と思っていたが、今回の作品に限ってはその気持が分かってしまった。だって、あの余計なシーンとか、冗長なスロー演出とかを、もうちょいギュッとすれば一本にまとまった気がするんだけれどな。脚本上の切れ目として、杉元とアシリパの和解をクライマックスに置いたようだけれど、杉元が彼女を危険な目に合わせないと思って村に置いていく気持ちも弱いし、アシリパが合流するのはなんでだったっけと思っちゃうので、あのラストで納得することはなかなかできないですね。
僕は、例えば『ワンピース』や『キングダム』は、単行本の最初のほうくらいしか読んでおらず、したがってそれぞれの実写版映画も未鑑賞であるから、門外漢だったのだけれど、本作は珍しくきちんと原作漫画を全部読んでいたので、コミック原作の映画においては必ず巻き起こる「キャストが原作キャラクターのイメージと違うんだけど」という苦情が寄せられたりする件について、真っ向から語る権利があると思っている。その点でいうと、本作は「何が何でも原作と同じビジュアルにする」という方針を徹底していたような気がしてて、その結果、誰ひとりとして似なかった人がいなかったので、これはキャスティングやメイキャップや演技指導の担当者を、完全に褒めるべきであろう。しかし、ここに発する問題というのは、その努力は果たして、作品の魅力や面白さを向上させることに寄与したのか?ということであるが、僕としては「今回はしたんじゃないかな」と思っている。というのは、「牛山はおでこに四角い硬い部分がある」とか、「尾形百之助がビー玉みたいな目をしている」みたいなことって、この物語に対して必然性のあるファクターだからだ。もともと野田サトルがそこらへんをきちんとロジカルにキャラクター造形しているからだとおもう、下手に自我を持ってアレンジをすると大失敗するだろうので、完璧にモノマネをするほうが実直な態度だと思う。
人種間の文化ギャップをコミカルに描いたりもするため、映画界にポリコレの波がずぶずぶに入り込んでいる今となっては、アイヌ民族については誠実に扱わなければいけないが、きちんと血を引く秋辺日出男をキャスティングしたりしていて、ちゃんと辻褄を合わせたのは正しいアプローチだと思う。僕は北海道が実家なので、小学生の頃からアイヌの存在を学んできており、つまり日本が多民族国家であるということを社会の授業で認識してきたので、人種に対するフェアネスが腑に落ちる境遇である。まあ、この漫画は、『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』みたいに少数民族に向けた差別・搾取が主旨ではないので、そういうことをあんまり気にする必要はないのかもしれないが、「気にしなくて良かったな」という安心感があって良かった。