徳川

ノック 終末の訪問者の徳川のレビュー・感想・評価

ノック 終末の訪問者(2023年製作の映画)
5.0
少女を養子に迎えたゲイカップルがキャビンで余暇を楽しむ中、「世界の終末」を予感するという4人の集団が現れる。そして「3人のうち誰か1人の命を差し出せば世界は継続し、差し出さなければ3人を除いて世界が滅亡する」と迫られる…という、現代版トロッコ問題の話です。

私はアンドリューと同じくリアリスト、かつ排他主義なので「インチキ妄想自殺カルト集団の戯言に付き合うなんてバカげている。世界なんて破滅すればいい。そんなことあるわけないが(笑)我々は誰も差し出さない」という意見なのですが、この作品はレナード率いるカルト集団側の主張を信用出来るか否か(つまり宗教的なものに対する信仰心、理解があるか否か)で感想が変わりそうな気がします。

昨今LGBTQで炎上しがちで、かつ私自身がBTQに属するタイプであり、「特に理由はないけど話題性があるから同性愛要素入れました〜w」なものが嫌悪の対象になりつつあるため、始終「この作品の登場人物がゲイカップルである理由」を考えながら見ていました。
①同性愛でなくてはならない。
②同性愛でなくともよい。
③同性愛であれば利点がある。
この作品は少なくとも①ではないと思います。作中話題にあがる「素敵な家族だから」が条件であるなら、もっと身近な不妊夫婦や高齢夫婦が養子を迎えてもいいわけです。
しかし「ゲイカップルが被害者になる」ではなく「男性2人が被害者になる」という視点であれば、①が成立する可能性もあります。
よくあるホラー映画での女性の立ち回りは恐怖に慄き、叫び、涙し、取り乱し、場合によっては戦いもしますが、基本的には場の混乱を加速させ、問題を複雑化させる要素が大きいため、それを行わずトロッコ問題としてのストーリーを淡々と進めるためには男性だけが被害者の方がスムーズなのかもしれないな…と思いました。大抵の場合いらんことをしてパニックを引き起こしたり、庇護対象として枷となる役割を担うことの多い子供がこの作品では聡明で、かつ足を引っ張るような言動をしないどころかポジティブに立ち回ることがその説をより顕著としていると考えています。
結論として、同性愛を描きたかったのではなく、登場人物を男性に限定するために同性愛を組み込んだのかなと想定しました。

少しテンポの早いシーンもありますが、よく考えられ、よく練られ、狙った通りの着地点に落ちている作品だと感じました。描きたいものがはっきりとしていて、横道に逸れることのないストーリーで私は好きです。
レナードたちの来訪を報せるノック音、そしてエンドロール後のノック音について、普通ドアのノックであれば2〜3回であるはずなのに、何故7回なんだ?と思い検索したところ、7は「神の休息」「完全」「世界」を表すそうです。よく考えられているなあ…と最後の最後まで感心しました。笑
徳川

徳川