映画好きの柴犬

きっと地上には満天の星の映画好きの柴犬のレビュー・感想・評価

きっと地上には満天の星(2020年製作の映画)
3.7
羽をもいでいるのは誰だ

 ニューヨークの地下鉄の廃トンネルに暮らすホームレスの母と娘。再開発のために棲家を追われた親子の一夜の逃避行を描く。

 タイトルからは、外界から遮断された閉鎖環境を描くSFファンタジー的な印象を受けるが、「ルーム」や「ブリグズビー・ベア」に近いリアルな社会派ドラマ。しかも、娘を地下に閉じ込めているのが実の母親ってのがタチが悪い。

 母は娘を愛しているし虐待しているわけでもないが、生活能力がなく、娘にちゃんとした暮らしを与えられないということは、間接的な虐待にも近い。そのうえ、娘を奪われることを何よりも恐れている。「アイ・アム・サム」のように、親に生活能力がないからといって、親子を引き離すのが正解とは言えないが、今のままがいいはずがない。

 物語自体は、ほぼ1日のミニマムな話。結末は、ほろ苦くも希望を持たせるものだが、母親にもう少し判断能力があれば、より良い道が選べたのではないかと思わずにいられない。