MikiMickle

ファンタスティック・プラネットのMikiMickleのレビュー・感想・評価

4.5
カリコレにて。

アニメ初のカンヌ審査員特別賞受賞。
フランスのSF作家ステファン・ウルの『オム族がいっぱい』原作、画家ローラン・トポールのイラストを使って、アニメ作家ルネ・ラルーが映画化。
いまなお人気の高いカルトアニメ。

どこかの星。赤ん坊を抱いて逃げる母親の前に現れたのは巨大な青い手。行く手を阻まれ、デコピンされて落とされ、母は死んでしまう。
青い肌、赤い目、半魚人のようなエラのある巨大な生き物。彼らはドルーグ族という、高度な文明を持った生物。
通りかかったティバという名前のドルーグの少女に拾われた赤ん坊は、テールと名付けられ、ペットとなる。
人間のようなオム族はとても小さく、ドルーグ族に孫悟空的首輪つけられてペットにされたり、踏み潰されたり、駆除されたり。虫みたいなものですよ。

ティバのカチューシャレシーバーを使った、脳に直接教え込む学習方法で、テールも同じように知識を得ていく。テールは隙を見計らってレシーバーを持って逃げ出し、隠れ住む野性オム族と出会う…
これが、ドルーグ族とオム族の戦いへの引き金になっていく……

という話。

まず、一目見て気持ち悪いと思う。目、赤いし、瞑想すると白眼になるし‼
でも、芸術としかいいようのないシュールな世界観。
ドルーグ族の習慣は、イマジネーションの宝庫って位独特で、瞑想シーンは特に不思議で幻想的。毒々しい色使い。
不気味な生き物たちの見た目も生態もまたかなり独特。
細かに線の入った劇画のような絵がまた素晴らしい‼ヒエロムニス・ボスの影響を受けてるってのがわかる。

その世界を表現しているのは、切り絵アニメという、背景の上に一枚一枚描いて切り取った絵を置いて作られるアニメ手法。4年間かかったそうだ。
アニメというよりも、動くバンド・デ・シネ漫画といった方が近い。セルアニメじゃない、チープとも思えるその手法のおかげで、この世界観がまた特異なものになっています。

ストーリーは、オム族が反旗を翻すという単純なものだけれど、オム族を虫けらみたいに扱う無表情のドルーグ族が坦々としてて怖い。子供たちが、ペットのオム族を戦わせて遊んでたり… ドルーグが完全な悪としては描かれてはいないんだけど。ティバがテールを可愛がったり。

ドルーグとオムの対比は、人間と自然破壊、人間同士の差別、奴隷制、支配者による圧政などを考えさせられました。
そして文明、知識というものについても。
レシーバーを使って知能を高めていくオム族。文明や技術の必要性を感じたりもしました。

アラン・ゴラゲールの音楽も、当時としては新しかったシンセサイザーを使い、かっこいい‼

ラスト、テールって名前の意味がわかった時に鳥肌たった‼
映画館で観れて、ほんとに嬉しい。
壮大で芸術的でイマジネーションを刺激させられました。
MikiMickle

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