lorca

ダイアリー・オブ・ザ・デッドのlorcaのレビュー・感想・評価

3.5
さすがロメロ。ゾンビ映画の本家本元がやってくれた。殺人現場の一軒家で実況中継しているレポーターがゾンビに襲われる冒頭のスタイリッシュなシークエンスに思わずうなる。

メインの登場人物は映像専攻の学生たち。ドキュメンタリー監督を志す主人公は、自分たちに降りかかってくる事の一部始終をカメラに収めようとするが、非常事態下であるから、そこでは当然、被写体となる仲間たちに「こんなときになにやってんだ」という拒否反応が生まれる。

撮ることの意味を問いかけるロメロの姿勢。それは主観撮影に端的に表れている。インターネットの投稿動画や監視カメラの映像もふんだんに盛り込まれる。そういった作りは、モニターやファインダー越しのリアリティとは何かという問題意識を突き付けるものだ。現代の人間は、みんな「傍観者」なのかもしれない。そんな「傍観者」もゾンビたちに身体を食いちぎられ、血が流れて、「当事者」となる。そんなギャップが、今作の深遠な喚起力につながっている。

作中のナレーションに、「これだけテレビやネットで騒がれているのに、本当のことはわからなかった」というのがあった。ロメロはエンターテイナーであるのと同時に文明批評家なのだ。
lorca

lorca