このレビューはネタバレを含みます
配信だったら3倍再生どころか9倍再生されかねないオフビートな間だが、他の観客と一緒に「ゆるさ」として受け入れられる場が映画館だと思う。
そういった意味でとても映画的な作品だと思っているので、スクリーンで観られてよかったなと心底思う。
原作の改変も、ぼくはうまくいったんじゃないかと思っている。
「綺麗なもんしかあかんかったら、この街ごと全滅や」というセリフに代表されるように、声変わりで美声がなくなってしまう聡実くんの失望や焦りが、ミナミ銀座という汚い世界で生きる狂児と出会うことで変化していくというのが物語のエッセンスだと思うが、実写化しても違和感がないよう、ささやかだけど繊細にいろんな箇所を変えていた。
観終わった後に、どうしてこう変えたのだろうと考えると、一つ一つが納得のゆくものだった。
ゲームの終わった崩れかけのジェンガを、また積み始めるような難しさがあったと思うが、制作陣はすばらしい仕事をしたと思う。
ところで、ミナミ銀座のロケ地は山梨県甲府市の南銀座らしいのだが、設定のモデルは大宮市の某所なのだろうか。関東要素が強い。
でも、現代っ子でクールな聡実くんが、狂児の持った人情にほだされる話なので、原作通り大阪舞台の大阪弁で正解だと思う。これは沖縄出身の和山先生からのお願いだそうで、先生ナイスセンス。