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カラオケ行こ!のカニバルのレビュー・感想・評価

カラオケ行こ!(2024年製作の映画)
4.0
それは幻のように淡く、でも確かにあった「日常」。
ヤクザ×思春期の合唱部長という本来交わらない二人が「カラオケ」を通じて交流していくブロマンス。

変声期が始まり、「大人と子供の狭間」である聡実の目を通して
失っていくものと得ていくもの、それぞれの登場人物が大事にしているものへの向き合い方が細やかに描かれる。

ギャグもストーリーを構成する要素も激情を伴うものは無く、クスリとする笑い、少しの切なさといった日常の細やかな感情が積み重さなって、
それが作品のクライマックスで心に大きく訴えかける脚本構成が素敵。

ストーリーの設定自体はやや突飛なため、少しでも違和感を覚えたら成立しない作中で各登場人物にリアリティと存在感を生み出していた俳優陣も素晴らしい。全体的に丁寧で「愛」を感じる作品。

映画部での思案、合唱に打ち込んだ日々、ヤクザと過ごす非日常。
そのどれもに間違いなどなく、確かに「自分」を形作っていく。
狂児が聡実に言った「きれいなものだけ~」というセリフとリンクしている本作のメッセージ性が鑑賞後にしっかり心に響きました。
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