通りすがりのいがぐり

キラーカブトガニの通りすがりのいがぐりのレビュー・感想・評価

キラーカブトガニ(2021年製作の映画)
5.0
愛に溢れる80分

アメリカからすげえ"愛"がやってきた!
人喰いカブトガニが人間を踊り食うという奇想天外な地獄絵図を丁寧かつ真心込めて作られた傑作だ!チープだ?B級だ?いいや違う!こいつはれっきとしたトリプルA級の映画だ!

まず、俗に言われてる低予算モンスターパニック映画のドラマパートは退屈であるというジンクスを見事解消している。車椅子の天才少年と少女のキラキラしてて微笑ましい青春と元生徒と元教え子の2度目の青春描写の描き方がこの手の映画として大変貴重と思えるほどよく描けている。ネタバレになる可能性があるので伏せておくが、目的達成のため悪戦苦闘する少年を支えながらあと一歩踏み出せずにいる距離感や、淡い恋心がもう一度燃え上がる模様などの描き方が本当に綺麗だった。なんならこのドラマだけでもう一本映画が作れる。そのくらいちゃんとしてる。
さらに、カブトガニの造形や襲撃描写もしっかりと力を入れてる事だ。可愛らしくもしっかり残虐に人を喰い殺す様はまさに凶暴な今作のカブトガニ。そんな彼らにもちゃんと顔はあるし目もあるし変身するしと、人喰いカブトガニの造形をちゃんと見せてくれるカットもちゃんとあったりと、ちゃんと作ってるアピールとカブトガニの魅力を伝えることに見事成し遂げている。モンスター映画に必要なカットをしっかり入れてる。

そして!愛だ!監督の「俺はこれが好きなんだ!」が前面的に出し惜しみなく発揮されてる全編80分を彩る大好きがしっかりと詰め込まれてるのだ!ドラマを展開しながら混乱を予感させる前半から事が起こる中盤と抱腹絶倒ながら興奮必須のクライマックスまでしっかりとやりたい事をやってカッコよく走り切る勇姿を幻視する程やりたい事をやり遂げたあのラストカットには感動したんだ!

エクストリーム配給作品の最高傑作であり低予算ながら怪獣映画として大変素晴らしい一作だ。是非笑いながら胸熱になれるこの作品を観てほしい。強く心惹かれる大好き讃歌がこの映画にはあるんです。