Garikuson

FALL/フォールのGarikusonのネタバレレビュー・内容・結末

FALL/フォール(2022年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

フリークライミング中の事故により目の前で夫ダンを失ったベッキーは、1年近く経ってもそのことが忘れられずに酒浸りの日々を過ごしていた。
それを見かねた親友ハンターが恐怖と悲しみを乗り越えるための荒業企画として、地上600メートルを超える古い電波塔によじ登って頂上でダンの遺灰を撒くことを提案。
初めは難色を示していたベッキーだったが、このままではいけないという思いからこの企画を承諾。2人は砂漠の真ん中に立つ巨大で細長い電波塔の梯子に手をかけて登り始め、遂には頂上に到達する。
ハンターもエクストリームスポーツ的なことを配信する危険系インフルエンサーで、ベッキーもフリークライミング歴は長いため、比較的サクサクと登頂できたこともあり、頂上では余裕をかましながらさまざまな危険行為を楽しむ2人。記念撮影とダンの遺灰を撒き終え、元来た梯子を降りようとした2人だが、なんと梯子を繋いでいたボルトが老朽化で緩み、梯子が外れて地上に落ちてしまう。命からがら何とか頂上に登り直した2人だったが、地上に降りる手段は無くなってしまった。
携帯も高度が高すぎて電波がなく、飲み水の入ったリュックは頂上の10メートル下のパラボラアンテナに引っかかってしまっている。半径1メートルもない頂上足場に取り残された2人はこの後どうなってしまうのか。。。

数あるソリッドシチュエーションホラーの中でもかなり場面が限定された稀有な作品。かつ、恐怖は人でもモンスターでも幽霊でもない、単純な「高度」。落ちたら何の疑いもなく死ぬことが確定している高さである。
今まで映画を色々見てきたが、この映画ほど劇場で見られなかった事を後悔し、同時に劇場で見ずに済んだ事に安堵した作品も珍しい。
何せ撮り方が凄まじく、自分の目線で見てるかのような高所演出の数々。風や揺れさえ感じそうな圧倒的なリアリティ。風で揺れて音を立てる鉄材、腐食して穴が空いた鉄骨、緩んだボルトがちょいちょいアップになり不穏さを掻き立てる。
後半の高所パニックのところよりもむしろ序盤、ハンターが余裕かまして水飲んでるシーンとか、片手で足場からぶら下がって記念撮影するシーンとかがもう見てられないくらい怖い。
高所がそもそも得意ではない私は手汗脇汗どころか常時肛門と睾丸がゾワゾワしっぱなしだった。

演出もさることながらストーリーも割と練られている。伏線回収も丁寧でちょっとしたビックリ演出もあるし、なにより使えるもんは何でも使ってやろうという部分も妙に説得力がある。

自撮り棒の正しい使い方!スニーカーの正しい使い方!正しい死体の使い方!

最後は足場じゃなくパラボラアンテナの上で助けを待ってたんだろうか。。。

人生はあまりにも短く儚い。一瞬一瞬命を燃やし、全力で後悔のないよう生きよう!
ごもっともだし、かくありたいものだが、間違ってもこんな罰ゲームみたいなことだけはしたくないのは確かだ。。。
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