R

イコライザー THE FINALのRのネタバレレビュー・内容・結末

イコライザー THE FINAL(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

映画館で友人2人と。

2023年のアメリカの作品。

監督は「トレーニング・デイ」のアントワン・フークア。

あらすじ

訪れたシチリアでの事件で負傷したことをきっかけにアマルフィ海岸沿いの小さな田舎町にたどり着いたロバート・マッコール(デンゼル・ワシントン「マクベス」)。よそものにも関わらず、親しみを込めて「ロベルト」と接してくれる街の人々に癒され、この町を安住の地とすることを決意したマッコールだったが、この町にも悪の手が忍び寄る。街の人々が次々と凄惨な目に遭うのを見て、マッコールは再び「仕事」を開始する!!

「なめてた相手が殺人マシーンでしたもの」の中でも、個人的に大好きな「イコライザー」シリーズの最新作ということで、午前中に一作目を再履修して、いざ鑑賞ということで友だちと行ってきました!!

結論としては、面白かった!…ただ、テイストがこれまでのシリーズとかなり違った結果めちゃくちゃ変な映画になってて戸惑いました笑

お話はあらすじの通り、なんと今回の舞台はイタリア、ということで序盤は本筋の場所から少し離れたシチリアで起こるある事件から始まるんだけど、何やらお爺さんが子どもを連れて、あるぶどう園を訪れるとそこには悪そうな奴らの死屍累々。で、行き着いた先には出ました!我らが主役ロバート・マッコール。

ただ、シリーズ一作目が2014年、2作目が2018年ということで一作目から数えると8年経ってることもあって、ロバート・マッコールというかデンゼル・ワシントン老けたなぁー!!という感じ。

ただ、その佇まいは相変わらずで両脇にマフィアが銃を構えてマッコールを狙っているのにも関わらず、窓からの光がまるで神聖な神を照らしているように見える演出の中、どっしりと座り、ピンチに見える事態に怯えるでもなく、ただそこにあった布巾を丁寧に折っていて、とにかく不敵でインパクト抜群!

で、予告でもあった「9秒だ」のセリフの後、こちらも出ました!マッコールのトレードマーク、北欧ブランドの「SUUNTO」の今回はスマートウォッチでカウントダウンされた後、ものの見事な早業で今回も敵4人を瞬殺していく仕事人具合!!老けたとか言ってすんませんでしたぁ!!

ただ、冒頭出てきた老人がどうやらそのボスらしいんだけど、なんの悪さをしてこのような事態になったかわからずじまいのままであること、孫っぽい男の子を連れていて、ぶどう園の前でその子を待機させる=守ろうとしていたことから、そこまで悪そうに見えないこともあってか、致命傷にならなかった老人がマッコールの元を命からがら逃げ出そうとするのをゆっくりと追いかけてその顔面にショットガンを撃ち込むくだりは、なんかそれまでのシリーズの「ヒロイズム」はかけらもなく、どちらかというと「闇堕ち」しているようにも見える。

で、そんな襲撃の後、ぶどう園を後にするんだけど、なんと老人の元に残された少年が背後からマッコールをショットガンで撃ってしまう衝撃。子どもが撃ったこともショックだったけど、それ以上にあの完全無敵のマッコールさんが撃たれてしまうなんて…子どもだから油断したのかもしれないけど、ここもやはりどことなく体力的な「老い」を感じさせる。

で、流石のマッコールも重傷を負い、瀕死状態でたどり着いたのがアマルフィ海岸沿いにある小さな田舎町。アマルフィといえば織田裕二主演の作品があって、名前だけは知っていたが、ここで感じたのはまぁーロケーションが抜群にキレイ!!

それまでの舞台がアメリカのボストンという個人的にアメリカの中でも「くすんだ」イメージもあったこともあって、美しい海岸とそれに隣接する形で立ち並ぶ白い煉瓦造りの街並みがまるで「007」の映画を観ているようで、もうこれだけでシリーズの中では異質。

で、そんな中、担ぎ込まれて、親切な町医者エンゾ(レモ・ジローネ「我が名はヴェンデッタ」)に助け出されたマッコールは快方に向かい、その美しい街並みを歩くんだけど、やっぱ異質!!全身黒のスタイルもあってか、他の人々の中にあまり黒人がいないように見えるからかはわからないけど異物感が半端なく、歩いているだけなのに浮いて見える。

ただ、イタリアの気風なのか、そこで出会う人々はよそ者のマッコールにもみんな親切で、初めは警戒していたマッコールの表情もどんどん穏やかになって、街にも馴染んでいき、やがてはこの地こそが自身にとって安住の地であることを確信する。

初めは「闇堕ち」しているように見えたマッコールだけど、この街の雰囲気と人々とのふ触れ合いに癒されたのか、どんどん「邪気」が無くなっていくようにも感じられて、はじめは杖なしでは歩けないほど老人のようにゆっくりと歩いていたのが段々杖なしでも歩くようになって、上がるスピードも早くなっていき、やがては街の頂上にある大聖堂みたいな場所にも颯爽と駆け上がっていく演出もそれによく現れている。だからか、初めは「老い」を感じたマッコールの顔相もなんか健康的というかシュッとしてる?これ、もしかしてデンゼル役作りとかしたんかな?

ただ、そんなマッコールにとっての心の安息も長くは続かない。元々はマフィア大国のイタリア。ここにも地元マフィアの魔の手が忍び寄るんだけど、一作目ではロシアン・マフィア、2作目では元同僚と来て今作でその相手となるのはイタリアン・マフィア。

イタリアン・マフィアといえば俺はまだ恥ずかしながら未見の「ゴッドファーザー」シリーズが有名すぎるが、今作でのマフィアたちは上層部はスーツ、下層部はバイカーやストリートファッションと全員「黒」を基調とした見るからに豪奢で悪そうな見た目で流石オシャレ大国でもあるイタリア、めちゃくちゃスタイリッシュ。

特にその登場時がなかなか刺激的で、街の魚屋に金をせびりに行った後、下っ端たちがバイクでヴォンヴォンバイク音を鳴らしながら大挙して、別の場所に待つ仲間のところに赴くまでをバックで長回しで撮ってるんだけど、なにやらアバンギャルドなギターロックのBGMをかき鳴らす演出もあってここもすげぇカッコいいというかイカす!!

で、その組織を取り仕切るのがヴィンセント(アンドレア・スカルドゥツィオ「ミッション:インポッシブル/デッド・レコニングPART1」)とマルコ(アンドレア・ドデロ「憎むなかれ」)のクアランタ兄弟!!ヴィンセントはスーツで高級感がある感じ、マルコはストリートファッションでそれぞれバシッときめてて個性的なんだけど、こいつらがとにかく極悪。特に兄貴の登場シーンは上記でマルコが合流した場所で何やらそこに住む夫婦と立ち退きの話し合いをしているんだけど、ショットがなぜか夫婦の元に住む、多分奥さん側のお父さん=おじいちゃんなんだけど、どこか途方に暮れた表情で車椅子に座り、ヨボヨボしているショットを映していて、どこか不安感を感じさせると思ったら、その次の瞬間、ガッシャーンと窓が割れるとそこからそのおじいちゃんが縄にくくりつけられて首吊り死体となる変わり果てた姿に…。

どうやら、立ち退きの話し合いがうまくいかなかったようで、他の住民への「みせしめ」としてくくりつけられたようなんだけど、夫婦ではなく1番弱者の老人を殺すなんて…と、それを見て泣き叫ぶ奥さんの金切り声をバックにそこを後にする2人がまさに悪そのものというか真性のドクズ感があって良き。

前作2がマッコールの直属の後輩という戦闘のエキスパートということもあって、比べるとその脅威性は見劣りするものの、よく考えると相手の強さはあまりこのシリーズ、言うてはこの「なめてた〜ジャンル」には関係ない。要はどう料理するか、どう我々観客に「ザマァ!」と溜飲を下げさせるかが大事なわけでそう考えるとこのクズ具合はうってつけの相手と言える。

でだ、この「イコライザー」シリーズ、それまでアメリカボストンが舞台とあって、なんで今回舞台を変えてイタリア?と思った方も多いだろう、ロケーションとそこに住む人々、そして憎々しい悪役とまぁロケーションを別にすればアメリカでも成立するわけで、初めは違和感を感じていた俺だけど、なるほどラストの「ある演出」を観て膝を打った!なるほど監督「これ」がやりたかったのかぁ!!それに関しては後述。

で、話しを戻してそんなマフィアたちがどんどん街の人々に危害を加えていくんだけど、マッコールに親切にしてくれた魚屋のおじさんの店がマルコに燃やされて全焼してしまったり(それを見て泣き叫ぶ夫婦の姿がマッコールに優しくしてくれただけあってまた観ていて痛ましい)、カラビニエリと呼ばれるイタリアの国家憲兵の隊員ジオ(エウジャニオ・マストランドレア「バスターズ」)がそこに映されたカメラを見て警察にナンバーを通報するとそれがバレて、家に押し込まれて、奥さんを乱暴されたり、娘ちゃんをだしに脅されたりして自身も傷つけられたりする姿を目にして、またも「仕事」を開始する!!

で、こっからは容赦ない「殺し」のターンに入っていくんだけど、まずは弟マルコ!レストランで食事に行ったジオ家族の元に現れ、またも脅迫してくると、その現場に居合わせたマッコールがまるで獰猛な獣のような目つきでガンをつけるとそれに気づいたマルコたちが「なんだやるのか?アーン??」状態で即座に一触即発の緊迫感に包まれる。ただそこで「正中」と呼ばれる親指と人差し指の間の秘孔をついて、マルコを「ギブギブ!」状態で退散させた後、「あいつゆるさねぇ!」とすぐさま復讐に仲間たちを呼び集めて奇襲をかけようとしたのも束の間後ろから車がドーン!!そこで運転席に乗った下っ端と側近を一名ぶち殺した後、後ろから意気揚々とやってきたマッコールがワインのビンで屈強そうな男をバリーン!!「え?え?」と戸惑いながら小手先のナイフで襲いかかるも、まるで道化か何かのようなひょうきんな動きをして軽快にかわすマッコールさん!!そしてトドメはそのマルコのナイフで喉元から口を飛び出してナイフグッサー!!極め付けはその表情、いや距離感近い!近い!マジでキスするんかってくらいの至近距離でガン見でトドメを刺していて、煽り耐性抜群!!初めの「カマシ」としては大満足だけど、マッコールさん、一作目では「ごめん…」とか言ってたのにキャラ変わったんか笑。

で、続いては兄貴ヴィンセントのターン。弟を殺されて怒り心頭の中、またもジオが襲われ、そのジオを人質にマッコールを呼び出すことに成功、ジオが人質に取られているので、武器も捨てて敵に囲まれ、もはやここまでと観念したマッコールを後押しする形で銃とスマホを手にそれまで怯えるしか無かった街の人々が遂に立ち上がり、マッコールに加勢、逃げ帰るマフィアたち、そのシーンも遂に民衆が立ち上がった!と観ていてジオが犠牲にならなかったことにホッと胸を撫で下ろすと共にスカッとするんだけど、本番はここから!それ以前に安息の地イタリアでトレードマークの「SUUNTO」の時計をそっと封印していたマッコールが遂に再びその時計をつけて、夜な夜なヴィンセントの屋敷に奇襲を仕掛けるんだけど…。

背後から忍び寄り、まずは門番を殺した後、薄暗い屋敷の中を相手に悟られないように1人、また1人とその牙にかけていく様がマジでホラーそのもの!!

で、イタリア×ホラーといえばダリオ・アルジェントやマリオ・バーヴァをはじめとした、そう「ジャッロ」と呼ばれる独自のホラージャンル映画。

そのものズバリ、ラストのヴィンセントのシーンではベッドで寝ているヴィンセントの天井からポタポタと何かが滴り落ちてくる。それに気づいて起きたヴィンセントがその液体に触れるとそれは血でどこから落ちているのかと天井を見上げると聖母が描かれたステンドグラスの天井ガラスがバリーン!と窓が割れて、そこから次の瞬間、部下の変わり果てた姿となった死体が逆さ吊り状態でブラーン!!その部下の強烈な表情のまま死体となった姿に戦慄するヴィンセントが屋敷を逃げ惑う中、背後から頭を殴って気絶させつつマッコール。その最期は自身が取引していた薬物をたらふく喰わせて薬漬けにした後、恐怖に逃げ惑うヴィンセントをゆっくりと追って、心臓麻痺で死に絶えるまでをジィーっと見つめるラストに震撼。

血と夜の闇と強烈な色彩の演出、恐怖に慄く表情、そしてその登場時にもかかったアバンギャルドにかけ鳴らされるギターロック!!いやぁ、清々しいくらいジャッロだねぇ笑笑!!もはや確信犯的なこの演出になるほど、監督これがやりたかったんだなぁ!と納得。今や一大ジャンルとなったこの手のジャンルの「ザマァ!」演出、これまでの戦いとは一線を画す、ある意味新基軸なこの演出に「イコライザー」シリーズの新たな面白さを見た!!ただ明らかにやりすぎだろ笑笑!!

ラストは悪者もいなくなり、長年の戦いに身を置いていたマッコールが遂に安息を手にして、地元民と触れ合い、自然と笑い合って終わるラストも最後らしく、良い終わり方だった。

そんな感じでシリーズの中ではかなり異質な作品だったんだけど、不満点というか少々物足りない部分もあって、漢人の殺しのシーンが冒頭含めてこの3箇所くらいなんだよな。で、その大きな要因がイタリアパートとはまた別に冒頭のぶどう園での一件で捜査に乗り出すCIAの捜査官、ダコタ・ファニング(「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」)演じるコリンズのパート。

これがまた長い。なぜマッコールがこのぶどう園での一件に関わったのか?そもそもこのぶどう園で何が行われていたのか?要はその解説パートを担うんだけど、こちらとしてはマッコールの「仕事」が見たいわけで、久々のダコタ・ファニングは大人になったなーと感慨深く感じつつもやはり派手さはないのでもどかしい!!中盤ある爆発に巻き込まれるシーンはIMAXで今回観たのでめちゃくちゃビクッてなったけど笑。

ただ、最後の謎、なぜ彼女がマッコールに選ばれたのか、その答えは…なるほどねぇ。ここはぜんぜん予想つかなくて普通にグッときた。

後、序盤に出てきたマッコールを撃った少年。その後ぜんぜん出てこなくて音沙汰ないけど、あの後どうなったん?とモヤモヤは残る。

そんな感じで物足りない点はあるもののやはり「イコライザー」一定数以上の面白さはあってこれはこれで大満足!!監督コンビが今作まで変わらなかったというのが大きいけど、一作目から変わらずちゃんと面白さを提供してくれるこのシリーズの存在は稀有なことだよな。

ただ、まぁ「FINAL」とは銘打ってはいるもののそこまで「最後」っぽさはなく、全然作ろうと思えばまたできる終わり方だったので、このシリーズこれで最後なんて言わずに個人的には未来永劫マッコールさんの戦いを観ていたいッス!!
R

R