このレビューはネタバレを含みます
TOHOシネマズ試写会で鑑賞。
男仲間内でチヤホヤされていた未熟な不良青年・信長はセンス抜群の優秀な敏腕プロデューサー・濃姫の育成により瞬く間にスター街道まっしぐら。絶頂期には業界トップのポジションに昇り詰めるもメンタルとプライベートはボロボロ状態。濃姫ともすれ違い一時は別離を選ぶも、お互い離れては生きていけないと数年越しに寄りを戻し、二人は健康的精神的に安定していく。
しかし絶頂期の信長(当人にとっては暗黒期)に心酔していた病みメンタル信長の強火オタ・光秀くんは彼が人間らしくなるのが許せず___
という新しい角度の織田信長と濃姫のロックスター的波瀾万丈物語でした。
余裕の無さ・弱さを隠そうとする虚勢が際立つ木村拓哉の織田信長、心身共に最強すぎ格好良すぎる綾瀬はるかの濃姫、ヤンデレ光秀な宮沢氷魚くんと忠臣美少年な松本染五郎くんの麗しさ、エンドロールで判明する斎藤工の驚愕の別人ぶりは実物です。
ただ作品としてはツッコミ所が多々ありました(史実部分ではありません)。
良くない意味で特に気になった点↓
・信長濃姫の惨殺アクションシーン、相手を弱い身分の貧しい人々にする必要ある…?おそらくその後の性行為(性欲・愛情というより人を殺めた恐怖を抑える為の逃避行為)を描きたいが為の演出だと思うのですが、ならそんなの相手は暴力的な武士集団でもいいわけで。子どもを助けた拍子で〜という大義名分を作って社会的弱者を惨殺する強者の構図にしてしまう製作側の乱暴さには正直ドン引きです。
・信長の人間性が欠けていく(メンタル削られていく)過程が皆無。急に病んでてビックリした。二人が離れることになるキッカケの変化なので過程を見せる事はとても重要だと思うのですが…
・戦イベントと合戦シーンはことごとくスルー。比叡山延暦寺以外の戦イベントをほぼ描かないから展開が平坦に感じる。
あと、ここまで色々やっちゃったんだからいっそのことラストのラ・ラ・ランド的夢オチも現実にしちゃえばいいのに…と思ったりしました(やるなら徹底的に振り切れ!という意味です)。あのシーン、あまりにも子どもが思い描くような夢物語すぎてエンドロール突入時の悲しみ倍増という方向性ではよかったのかもしれませんが。
しかし大友監督、相変わらず恋愛感情含んだやりとりを描くのが上手くないままですね…(今作の場合、脚本の古沢さんの癖もあると思いますが) るろ剣でも思いましたが「この二人は想い合ってる」という鑑賞者側が知ってる大前提の設定に頼りすぎ、甘え過ぎというか。今作は“ツンデレカップルが最期まで忍ぶ恋”だったとはいえ、どうも物足りなさがありました。
映像が素晴らしいからこそ、余計惜しい。
目に見えて美術・衣装・人間・演出にしっかり膨大なお金を掛けていると分かる邦画は本当に貴重なので映像の見応えは抜群です。だからもっとお話のディテールを、人間の心の機微を繊細に描く方向にも頑張ってほしいなと思いました。