死者ノック

追想の死者ノックのレビュー・感想・評価

追想(1975年製作の映画)
3.9
男が仇のナチス兵員を次々と殺害してゆく。ある者は猟銃で仕留められ、ある者は水攻めを受け、またある者は生きたまま焼かれる、彼の妻の最期がそうであったように。自分の持ちものである城の構造を熟知しているとはいえ、男の行動にはほとんど無駄がない。まるで予め計画された作戦を実行しているとでもいうように。

しかし妻と娘を同時に失った直後の人間がこうもたんたんと復讐(しかも人の殺害)を行うことができるだろうか。殺害と平行して男の胸には過ぎ去ってしまった日々が度々去来する。彼が殺害を進めるにつれてその頻度は高まる。実は男が生きていたのは過去であることをわれわれは知る。全ての事を終えた後、妻を失ったことを“思い出す”ことで、だ。