深呼吸の必要
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「本当に青い海は
深いと黒く見えるんだねー」
そう、青黒いほどに。
冒頭の船のシーンを見た時、離島に向かう船の上ではしゃぐ彼女の姿を思い出した。
元々は私が言っていたことばの反芻。いま隣に並んでいる影は、その時笑顔を交わしたウチナーとは変わってしまっていたけれど。結局、そうして今はいつでも過去になってゆく。
いつもながらの安心安定のコトー先生の世界。
みんな年輪を重ねて皺も増え、髪の色も変わってしまったけれど、「情」という最大のテーマは絶対に外さない。自然という名の演者は、いつもの様に全く変わらず穏やかな表情を魅せる。
今回はいつものメンバーに加えて、新しい先生候補や卒業生も加えてお話がまわる。ただ、どうしても総集編的ないろは隠せない。困難にタチムカウのも、いつもの風景。
無医村、それも離島の未来と緩やかに消えて失われていく絶望と生との狭間の中で、そこに生み出される新しい息吹は大切なものだ。だからこそ、私はあの着地点が引っかかる。全てを物語るのが正しいのだろうか。
映画だからこそ、個を相手する様になったドラマと違い、多数のお客さまに未来を想像、いや創造してもらう「のりしろ」や「行間」が必要では無いのか。
役者たちは、しっかりと世界を創っていてくれていた。特に一度、道を変えて、それでも戻ってきた彼には覚悟があったと思う。だから、惜しい。本作のメッセージとしては着地点がキモだったと感じるのだ。
まあ、だけどこんなことを考える時間もいい。
受け取り方は千差万別。
そうして、映画がはね、ハコが明るくなって、お客さまの会話が始まり、記憶と共にそれぞれの物語がつむがれてゆく。そう、それぞれの物語。
だからこそ、いつも思う。
いつだって答えは 遥か彼方にある
それが映画なのだから。
STAYGOLD@ぴあ映画生活