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オッペンハイマーのSTAYGOLDぴあ映画生活のレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.0
愛の世代の前に
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天才とアレは紙一重。
まさにソノ危うさを感じさせる本作。

ただ、私的には、当時3歳の母親が祖母と小倉の軍需工場の近くに疎開していた事実があり…もし、あの一瞬の閃光がそこで奔ったら。
もし小倉の空が曇っていなかったら、たぶん。

今この瞬間、呑気に駄文を書いていられなかっただろう私は、終始複雑な表情で銀幕を観つめていました。

まー、このネタは、「この世界の片隅で」とかで書いたからいいか。いまだに晴美ちゃんのシーンはキツすぎて困る。

正直、賢くはあるけれど、病んでて多淫で理屈っぽくて傲慢で弱虫なこんな男が同胞を焼き尽くし永遠の苦しみを与えたかと思うと切なすぎる。戦争という名の地獄の中で、結局は全ての人間が苦しむ。そこだけは平等な不幸の等価交換である事をドライに描いてます。まあ、中盤から後半が超タルく無駄に長い^^;
ただ、オッピーの苦悩は伝わりました。

確かに殺したのは大統領、しかしナイーヴな開発者、研究者は数十万に及ぶ魂の慟哭を夢に見て感じて平気ではいられないでしょう。違う研究開発でモノづくりをする立場で、オッピーのきもちは理解できます。犯した罪は変わらないのだけれど。

研究者同士の解りづらい友情や嫌悪のやり取りも興味深かったけど、ずっと付き合ってきた愛人と略奪した人妻の空気感が、均衡感が、マジ生っぽくて入り込みました。てか、愛人役の姫が初代嫁に似てて、その全てのやり取りがイタい…。アイツ、オキナワで元気にしてるかな。長女とは繋がってるみたいだけど。

実験シーンの破壊力や被曝の内容もリアリティが欲しかったかな。爆発の衝撃波とかメチャやらかくて、ドキュメンタリ・フィルム以下。山崎ゴジラの衝撃波を見習えよと!それじゃやわくて痛みが伝わらんよ。

広島と長崎の描き方はアレで良かったと思います。印象的なイメージで想起させる。今は同盟国であるこの国の民に気を使ったのかな。ブラッカイマーとかだとパールハーバーみたく無神経にアメリカ最高ドンガラガッチャンってヤリそうだけど。気遣いが感じられ、想像力も刺激され良かったです。

兎に角、全体的に薄味。濃厚で脳内に染みてくる画は無く、そこが惜しい作品でした。コレが女神像か。ちとモノたんねーなー。

まーね、いつだって答えは 遥か彼方にある
それが映画なのです

虐げられて生きてきたユ印の方々。アンネ達には想いを寄せられるけれど、年月が過ぎれば過ぎるほど、逆に彼らはジャイアン行為を繰り返す民族へとワル進化した。
経済を回すのも文明を進めるのも、そして命を左右するのも彼らの姿が見え隠れする。彼らも含めブラックアメリカンもアジアンもスパニッシュも、全ての民族にチャンスと自由がある国。今こそ星条旗に「なぜ?」を考えて欲しいと思わせる作品でもありました。
カントクに乗せられちゃったかなー。

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