ある程度の金を持った中年ゲイが若い男を囲う話。
要約が悪口みたいになってしまったけれど良い映画だった。
ゲイ当事者として見る日本のゲイ/BL映画は、
どうしてもストレートの人々のフィルターを通して描かれているように感じてしまうことが多かった中この作品はとても自然にみえた。
キャラクターの人物像などはそこまで詳細には描かれないのだけれど、
会話の中や生活のちょっとした所作の中からそれぞれのキャラクター性を掴むことができ、
気がついたらまるで自分が主人公になったかのような没入感を得ることができた。
それゆえに主人公のエゴの大きさと強さが自分との違いとして際立ちそれが恐ろしくもあり悲しくもあった。
彼は一連の行動の果てに何を思ったのだろう。
原作小説は未読なため物語の中盤あたりから着地点が見えず若干の中弛みはあったけれど、
阿川佐和子の名演により集中力を切らすことなく観続けることができた。
文筆家のイメージしかなかったけれどあんな素敵な演技をする人なのかとびっくり。
鑑賞後に監督の質疑応答があり、日本を取り巻くLGBTQ映画の受容や今後について色々と考えることもでき充実した時間となった。
