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エゴイストのbellevoileのレビュー・感想・評価

エゴイスト(2023年製作の映画)
4.2
東京国際映画祭にて鑑賞。

深く抉ってきた。
ゲイの恋愛を真正面から描きつつ、厳然と存在する格差社会とゲイとしての生き様を生々しく捉え続けるカメラを、一身に引き受ける鈴木亮平と宮沢氷魚に魅了され続けた。
映画が更なる広義の愛に達した時、静かに現れる「エゴイスト」の文字はやさしく突きつけられた刃。

若き恋人に励まされながら重いベンチプレスを上げる時、彼との激しいセックスで果てる時、気付けば画面の中の鈴木亮平に呼吸を合わせる自分がいた。
ドキュメンタリータッチで追う鈴木亮平は浩輔であり、原作者である高山真氏であり、私の日常生活にいる何者かとして確実に生きている。

本作は長回しの生々しさと、画の美しさが両立する稀有な作品だ。亡き母への喪失感と自分の無力さに苛まれる浩輔が、病身の母と暮らす年下の龍太への思いから起こす行動はエゴなのだろうか…。
「愛がなんなのかよくわからない」と自らをエゴイストだと言える人は、きっと優しい人だ。

また性的マイノリティを主人公とする日本映画が、マイノリティである葛藤だけを描く訳ではなく、また恋愛の成就だけに固執せず二段階くらい先を行く物語に本作が到達してることを素直に喜びたい。
同時に「当事者による表象」についても考えさせられること必至。
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