三浦さん演じる主人公は、恋愛感情や性欲がない。
だがそれは決して、人に対しての愛それ自体を手向けることがない、あるいは無関心であることを意味しない。
むしろこの主人公はどこまでも大事な人に対して愛情深い人物のようにわたしの目には映った。
時々、心底人間をやめたくなることがあって、それって大きな挫折の経験とかじゃなくて、ただ“大好き”な人との関係に「異性として好き/嫌い」が挟まってきて、人間関係自体が終わってしまった時の方が強く思う。
そんな複数人の複数の感情を具に拾っている素敵な作品だった。
「恋愛感情や性欲を持たないことを『アセクシャル』と表現すれば物語はわかりやすくなるが、一方でSOGIEの流動性を許容しなくなる。また、『アセクシャルの人の特別な話』と切り離されてしまう可能性を孕む。だからあえて『アセクシャル』を含むセリフは除いた」と玉田監督が話していたのも印象深い。
なにより、SOGIの流動性や可変性を尊重しながらも、マイノリティが故に感じる痛みやしなくてよかった経験を普遍性に回収してしまわないよう作品を作られてるように感じて、そこもとてもよかった。