通りすがりのいがぐり

地下室のヘンな穴の通りすがりのいがぐりのレビュー・感想・評価

地下室のヘンな穴(2022年製作の映画)
4.7
"穴があったら入りたい"を踏み止まらせる珍味

「この穴に入ったら12時間進んで3日若返る」
そんな奇抜な設定を軸に理不尽ドラマを撮ったのは、変な映画ばっかり撮って日本に来る度みんなを困惑させる鬼才カンタン・デュピュー。タイヤ殺人鬼(文字通り車のタイヤが殺人鬼)に鹿皮のジャケットを着た人"だけ"を狙う孤独な殺人鬼と、文字通り変な映画ばっか撮ってる彼の最新作もこれまた変な映画なのだが、これまで日本に上陸した作品で一番濃厚で変な映画だ。穴が理解できず困惑する夫と穴にハマり続ける妻。そんな2人の辿る奇妙な顛末に至るまでの過程も変尽くし。突然現れるトンデモ展開もこれまた変。なんでこんなおっかない家が販売されるんだ?というツッコミがつけなくなるほど変尽くしな映画だがそれが良い。間違いなく一歩ずつマズい方向に進んでるドラマも演出によるメッセージの発信も丁寧に行なってるからこそ本編の変さの良さは今作でも維持されてた。

タイヤ殺人鬼の映画ことラバーが日本に上陸して早10年。変わらない良さを持ち続ける鬼才の映画を観れる素敵で怖い74分間。気にいる人は大変気にいるだろうし、気に入らない人にはとことん気に入らない本当に"変"な映画。やっぱりあなたの作風が楽しくてたまらない。