悲惨、壮絶…移民迫害の歴史を絵画タッチで描き心を抉る。
なぜ人が人を追い殺すのか。悪事を働いているわけではないのに。
こんな感想すら薄っぺらい。姉弟が国境に向けて逃走を繰り広げ、親切な人たちとの出会いもあるが彼らと再び出会うことはない。
Twitter映画配信番組「めーぶれ」の課題映画。
あまり自分からは観るタイプの作品ではありませんが、凄く良かったです。
実写で観ることでエグさや悲惨さを感じることはできますが、アニメ、しかも絵画タッチのアニメーションなのでおどろおどろしさの表現なんかは実写ではできないところ。
アニメにしたからこその良さが際立つ作品でした。
絵を描く時って失敗したらヤケになって黒い絵の具でグチャグチャって怒りのあまり塗りつぶすってこともあると思うんです。
そんな黒の使い方が実に巧みで、そんな演出が移民迫害の恐ろしさをさらに加速させていました。
主人公姉弟は何も悪いことしてないし、彼女たちを追いかけまわす兵士たちは職務としてやっているわけですが、もはやそこに人間の心はありません。
いい人たちもたくさん出てくるし、そこで出てきたアイテムが後半に活かされてきたりと随所に伏線回収の巧みさも目立ちます。
なんというかこれでユダヤ人迫害の恐ろしさを疑似体験してわかった気になるのも違う気がしますが、少なくとも非人道的な行為に走る無意味さやそんな過ちを犯さない抑止力になるといいなという思いで観ていました。
※2023年自宅鑑賞17本目