ポンコツ娘萌え萌え同盟

命の満ち欠けのポンコツ娘萌え萌え同盟のレビュー・感想・評価

命の満ち欠け(2022年製作の映画)
3.7
元薬物依存症で更正施設を抜け、再び世界に戻るユウサク。でもあまりゲンジツに生きるには薬の一因になった兄も厚生施設の役員も薬の売人も偽善だらけの世の中。
ただその世界を映した中で本作の紅一点であり善性のあるミサトだらけの世界ではないし、ピーコのような友情感じるキャラだらけの世界でもないし、かと言ってモブながらも完全に馬が合わない一人であるゴミ処理の共同作業者、だらけというわけでもない。

ただ善悪の境界がついた内容ではないが本作の登場するキャラクター像は欠けを含有した人間達だし、重苦しい中で、ユウサクもまた追い詰められていく。
ただ自己の殻を破って蝉が羽化し世界を見た時、痛みも存在し幸福な生とは言い難い、或いは祝福に満ちた世界は存在たり得ないけど、少しでも前向きに生きて行くのが重要なのかもしれない。

どの役者の演技の熱量も生々しさも濃いが、監督兼主演である小関翔太の演じるユウサクのキャラクター像。序盤での魂を抜かれた虚無感の強い青年の像が脳内に圧倒的に印象に残る。トークショーで聞いた話だと目の隈のメイクはやりすぎたとのことだけど、寧ろそれがいい。
あのメイクと演技だからこそ本作の常盤のユウサクが纏う雰囲気はいつ死んでもおかしくないくらい本作の"生ける屍"を象徴だし、終盤の殻を破る姿にも納得行く部分はあると思う。

演出面では音の演出だろうか。公衆電話で酒飲んでからけたたましく鳴り響く夏のセミの鳴き声が段々と強調。
それから薬の売人の藤代の催眠の導入っぽい台詞ところでは静けさから事故に落としていくよう。他に気になったのが公衆電話を用いたこと。昨今ではスマホの世の中に対してコインが機械にに落ちる音がして繋がったことがわかる要素。他に現在場所から過去の記憶に映る手法で、(場所と)音の非同期→同期。

映像だと花火の場面で現在と子供の頃の過去の花火が交互に入り交じる演出の場面が強烈に印象強く残る。前述した通り本作は全編にわたって祝福たり得ない世界なのだけど、あのシーンの瞬間。花火の彩色が美しく燃えるところの楽しさ、まるで過去の花火で楽しむ姿に戻ったように。とそして花火が消え沈下した時の儚さ。